病み部屋 | ナノ


ウゼーんだよ、そう言って蹴り飛ばしたのは世界を愛すオレが憎む男。
オレは許したくねぇし、許さねぇ。何でオマエなんかがオレのなまえと一緒にいるんだよ。どうしてオマエになまえを取られなきゃなんねーの?



「M様!MZD様!」
「おう、なまえ。どうしたよ?」
「私、彼氏ができたんです!」


もうすっごく格好よくて!はにかみながらのろけるなまえは本当に幸せそうで、こっちまで幸せな気分になった。が、それと同時に相手の男が恐ろしく妬ましく、憎らしくてたまらなくなった。ずっと可愛がってきたなまえ。最初は世界の一部として可愛がっていたけど、いつしかひとりの女として愛する様になっていた。
さりげなくアピールとかもしてたんだが、なまえは全然気づかなかったみてぇだな。じゃなきゃ、こんな笑顔で相手の男を語ったりなんかしない。ああ、流石のオレも、神として振る舞ってなんかいられねぇや。んな余裕見せられるワケねぇじゃん。



世界にいらないモノとしてオレが排除した男はなまえが嬉しげに話してた彼氏だった奴。殺すなんて野蛮なことはしない。オレは綺麗さっぱり、アイツを消し去った。なまえが涙を流さなくて済むように、アイツがもう二度と現れることのないように、そして何より、オレが許せねぇから。


「なまえ、はよーさん」
「あ、M様。おはようございます」
「食事ならオレ様も一緒さしてくれよー、確かパンがいっぱいあったろ?」
「え…、はい…。何かふたり分買ってたみたいにたくさんあるんですよね…」


おかしいなあ、首を傾げるなまえの記憶からはすっかりアイツのことなんて抜け落ちてしまっている。ハハ、その通りだよな。だってオレが消したから。不思議そうな顔をするなまえが色とりどりの表情を見せるのはオレだけでいい。なまえが見つめるのはオレだけでいい。今までもそうだったろ?だからこれからも、それでいい。


「なまえ、忘れちまったのかよ。オレ様が食いに行くから買っといてくれって頼んだんだよ」
「え…?あ!言われてみればそうでした!やだ、何で忘れてたんだろ…?」
「何だよ、忘れん坊だなー。可愛い奴め!」


わしゃわしゃと頭を撫で回されるなまえの表情はすっかりオレを信じきって納得してる顔だった。昔からなまえはそうなんだ。オレの言うことなら大抵のことは信じる。それに今は少し、記憶を補完する程度に暗示をかけた。すっかり空いた穴が埋まったなまえは何も知らずに、オレと食事を取るんだ。
かわいそうで可愛いなまえ、すぐにオレのモノにしてやるからな。





―――

M様だってイライラするよ




13.05.21



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