病み部屋 | ナノ


最近の私は物忘れが激しい。物を置き忘れて烈くんに届けて貰ったりすることもしばしばだ。ちょっと前まで、こんなそこら中に自分の物を置いてくる様なぬけた人間じゃなかったはずなのになあ、私…。


「なまえ、また忘れてたぞ」
「ありがとう、烈くん。どうして私、こんな忘れちゃうんだろう…」
「ん、大丈夫だろ。忘れたらまた俺が届けてやっからさ!」


そういう時だってあるだろ!快活な笑顔を私に向ける烈くんは本当に元気をくれる男の子だ。とりあえず今は考えなくてもいいや、そういう考えに至れた私はもう一度烈くんにお礼を言って、教室に戻った。
あれ?私の隣の席って空席だったっけ…?そんなことまで忘れちゃうだなんて、私本当に大丈夫かな?



汚い物を取り除いて綺麗にすること、それが浄化の意味だ。運命浄化、俺の口癖ではあるが、近頃の俺が浄化しているのはなまえの運命と、なまえ自身。いらない奴は俺が綺麗さっぱり浄化して、なまえの記憶自身も俺が浄化して、綺麗ななまえのままにしてる。
最近のなまえの物忘れも、アイツはただの物忘れと思ってると思うけど、それは俺が浄化した物と入れ替えてるだけだ。本物のアイツの物は今は俺の手元にある。ちゃんとなまえの持ち物として保管してあるから、安心してくれよな。


「あの、みょうじさん」
「ん?どうしたの?」
「僕、みょうじさんのことが…!」


あれ、あんな虫いたっけ?
この浄化作業もまだ俺の中では全然途中。なまえの周りにはいくらだって汚いものがある。だから、俺が浄化する。


「なまえ、誰だよソイツ」
「え、烈くん?クラスメイトの…」
「そっか。じゃ、さよなら」


烈くんが男の子を殴って、炎で燃やしてしまった。断末魔を聞きながら動けない私は立ち尽くす。ガタガタと震えだす手はゆっくりと口元に運ばれていった。
私の好きな快活な笑みで振り返った烈くんは、いま何をしたの?


「大丈夫、これはただの浄化だ」
「れつく…こんなの、ただの…」
「次はなまえの番だぞ?恐くねぇから、目閉じて…?」


快活そうに見えて、実は全く明るくなんてない今の烈くんの笑顔はいったいどうしてここまで影をおびてしまったのだろう。
お前は綺麗だから、囁く様な烈くんの声と、チラリと見えた紅い焔と共に私の目の前は真っ暗になっていく。私、何を怖がっていたんだっけ…?



またひとつ浄化を終えた。綺麗なままのなまえは眩しいほどだ。なまえは置き去りなんて訳にはいかないから教室に置いて眠らせておこう。綺麗ななまえには誰ひとり近づかせねぇ。誰も、そう誰も。


「あれ、私また…」
「なまえ、ホラ」
「ああ、ありがとう烈くん…!これなくなると困っちゃうから。あ、いけない!彼と約束してたんだ!」


じゃあまたね、パタパタ走っていくなまえは可愛らしいけど、彼って誰だ。俺が一番お前の近くにいるはずなのに、何で、どうして俺以外に…。
大丈夫だよ、なまえ。また、俺が浄化してやるから。





―――

浄化は正しいと信じてるんだ




13.05.19



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