病み部屋 | ナノ


私は知らない間に誰かに恨まれていたのだろうか。昨日は教室の机の中に、今日は自分の靴箱の中に虫やらなにやらの死骸が大量に入っていた。朝、登校してきた時はなかったから安心していたら、今度は帰りにこれだ。やっぱり私は恨まれていたのかもしれない。これだけでも私はもう恐くてしょうがなくて、溢れだす涙を止めることもままならない。制服の袖口で無理矢理涙を拭う私の元へやってきてくれるのは、いつも風雅さん。大丈夫!?と真っ先に私の心配をしてくれる彼だけが、今の私が唯一信頼できる人だ。


「よしよし、どうした?」
「く…靴箱…」
「靴入れ?って、うおぉふ…!」


流石の風雅さんも顔をしかめて、片付けてくるから待ってろ、と私の頭に一回手を置いて行ってしまった。こうしている間にも犯人が私に直接何かしたりしに来ないか、不安で仕方ない。
そう、恐い所は犯人が私自身に危害を加えるのではなく、隠れてこそこそと誰がやったのか特定不可能な嫌がらせをしてくることだ。相手の顔がわかるのならば先生からも何らかの対処をしてもらえるのだけど、犯人がわからない限りむやみな行動は起こせない。それがまた私の不安感、恐怖心を助長させていた。もしかしたら私と同じクラスのあの子かもしれない、あの人かもしれない。人は疑いだしたら止まらない。


「何かあったら危ないから、俺が送っていく」
「え、でも…」
「いいから。涙目のなまえを置いて帰る薄情者にはなれない」


ホラ、
差し出された風雅さんの手をおずおずと握った。優しい彼は笑顔で握り返して、本当に電車に乗って、降りて、更に少し歩く私の自宅にまで着いてきてくれて、そこまで送ってくれた。どうしてそこまでしてくれるのだろうと、今日の靴箱での悪意を思い出して涙が出そうになった。こんなに優しい人が傍にいるのなら、きっと私は乗り越えていける。


「風雅さん、ありがとうございました…!」
「また何かあったら連絡をくれ。ストーカー、というのもあり得ない話ではないからな」


また明日、そう言ってなまえの頭を一撫でして、手を振りながら彼女の元から去った。みょうじと書かれた表札を見て、なまえの家まで知れてしまったと思わぬ収穫に口角を上げる。
涙目のなまえも悪くはないけど、やっぱり俺が来た時のあのホッとした様な表情は本当に好き。俺を求めてくれているんだと心が弾んでしまう。
そうやってどんどん俺に依存して、俺以外とは話せなくなってしまえばいい。なまえは可愛いから、きっと話している内に、いや話していなくとも他の男に目をつけられてしまう。
ちょっと卑怯なやり方かもしれないけど、なまえに俺に頼ってほしい。俺に微笑んでほしい。さあ、明日の仕掛けを考えよう。





―――

こんな優しいふりした風雅さんは嫌だ




13.05.06



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