病み部屋 | ナノ


隠れ込んだここがどこなのか、きちんと私はわかっていない。確認する暇なんて、彼から逃げている私には皆無だった。ガタガタと震える身体を無理矢理抑えつけて、息を潜めた。
私が逃げている相手は、自分の彼氏だった。最初は少し嫉妬深いぐらいだったのに、だんだんと彼は豹変していった。暗い目でどうして自分以外と話すんだと座った目で言われるのは最近じゃ珍しい話ではなかった。けれど今日は無理矢理私のコアを取り上げて、あろうことか壊そうとしてきたのだ。何とかブレンからコアを取り返して逃げてきた私はもう泣き出す寸前だ。ちょうど他のメンバーとは別行動をしている時だったから、幸か不幸か今の私の状況は誰も知らない。
そうだ、ひとまずチェイスに連絡してみよう。チェイスなら助けてくれる…!その一心で通信機に手を伸ばし、チェイスへの連絡を試みた。


『あー、もしもし?』
「チェイス!お願い助けて、ブレンが…!」
『ブレンがどうかし…』


チェイスの言葉が途中で途切れ、通信が途絶えた。彼の名前を何度か呼んでみても応答がない。青ざめる私を見ているかの様に、笑い声が通信機から聞こえてきた。背筋が凍る様な感覚を私はコアテックに入ってから初めて覚えたかもしれない。


『アハハハ!…チェイスと連絡取り合うなんて、酷いんじゃない?悪いけど、通信はジャックさせてもらったよ』
「ブレン…どうして…」
『ボクが機械に強いのはキミも含めて、周知の事実でしょ?』


いつものブレンとは明らかに違う低い声音。固まって動けない私を嘲笑う様にブレンは私の居場所などわかってしまっている、そう告げた。抑えていた身体は抑えきれずまたガタガタと震えだす。じわじわと私を恐怖の淵に落としていく彼は、ただの嫉妬では済まされないほどに嫉妬の感情を深く仲間に抱いていた。


「ねぇ、開けてよなまえー」
「…!」


いつの間にか切れていた通信。今度はブレンの肉声が私の耳に扉越しに届く。いざとなったら、とコアに手をかける私の冷や汗は尋常ではなかった。閉じ込もったって意味ないよ?と明るく言うブレンが私には怖くてたまらない。入った時には気付かなかったけれど、この部屋は電子ロックがかけられているらしい。今の内に逃げる方法を探さなければ、抜け穴を探す私に無情にも届いたのは扉の開く音。


「こんなロック朝飯前だよ、この天才のボクにはね」
「ブ、ブレン…」
「泣かないでよ、なまえ。やっと会えて嬉しいのはわかるけどさ」


見つかったよ、チェイス
いつもの調子で幼なじみに連絡する彼の目はいつもとは全然違う、光など一筋も入っていない瞳だった。嬉々とする彼とは正反対に、私は絶望感に包まれていく。とうとう溢れだす涙をもう私の好きなブレンが拭ってくれることはないのだろう。





―――

絶対ブレンは嫉妬深い




13.04.23



戻る

×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -