ボルテ | ナノ


胸のリボンもきちんと結び終えて、仮装はバッチリな私。我ながら衣装は可愛いと思う。似合っているかどうかは別として。


「烈風刀くん、トリックオアトリート! お菓子くれなきゃ悪戯するぞ!」
「はいはい、あなたですか…。来ると思ってましたよ」


自慢の衣装で突撃したは、烈風刀くん。呆れ顔で私を迎えた彼は、ため息でも吐きそうな雰囲気だ。
だがそんな態度とは裏腹に、彼は鞄をごそごそと漁りだす。そして可愛らしい包みを取り出したかと思えば、眉を下げた笑顔で私に優しく差し出すのだ。


「どうぞ、なまえ。あなたの為に用意していましたよ」
「もしかしなくとも…烈風刀くんの手作り!?」
「はい、もちろん。……おや、」


いかにも女子が喜びそうなクッキーを私に手渡して、彼はずい、と距離を縮めた。いきなりのことに対応できず、あわあわしていると、烈風刀くんが手を伸ばしてきた。


「…リボン、ほどけてます」
「えっ、え?」
「ほら、これでいいでしょう。せっかく可愛らしい格好なんですから」


なんでこの至近距離でそんな綺麗に笑うんだ。さっき以上にうまく言葉が紡げなくなった私は、顔の熱やらを隠したかったりなんだりの諸々で、つい、彼の後ろを指さした。


「ああーっ! すっごく過激な格好のレイシスちゃん!」
「えっ、レイシス!?」


くるりと振り返った隙に、走って彼から距離を置く。
後ろから烈風刀くんが怒っているけど、そんなことは気にしていられない。


「こら、お菓子はあげたでしょう!」
「れ、れふ、烈風刀くんにはどうしても悪戯したかったのです! そういうことにお願いだからしといてくださいっ」


烈風刀くんに捕まらない内に再び走り出す。彼も暇じゃない、私ばかり構っている暇はないはずだ。
チラチラと振り返って、彼が追ってきていないことを確認すると、息を吐き、胸を撫で下ろした。
息が整った頃に、烈風刀くんから貰ったクッキーを口に入れてみる。


「すっごく美味しい…」


クッキーの味と同時に、烈風刀くんの微笑みを思い出す。それから、衣装についての褒め言葉を。
頬にそっと手を当ててみれば、どんどん熱くなっていって。


「熱いよ、烈風刀くん…」


文句を言おうが、本人がここにいないんじゃ何の意味もなさない。
ついついうつむけば、胸元のリボンが目に入る。さっき烈風刀くんに結び直してもらったばかりのそれは、きちんと可愛らしく結ばれたままだった。





―――

烈風刀くんのイメージを詰め合わせてみました




15.10.31


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