ボルテ | ナノ


きゃっきゃきゃっきゃと楽しそうな高い声が聞こえている。クラスメイトの女子たちが話し合う声、それも恋バナのようだ。花を咲かせる彼女たちはその花を枯らすことなく延々と咲かせ続け、他の者の入れない領域を作り出している。
私に会いにわざわざ隣のクラスから来てくれる烈風刀くんにもその声が聞こえていないはずがなく、チラリと一瞥してから私の顔をまっすぐ見てきた。とても大真面目な顔で。


「…なまえは、ああいう話はしないんですか」
「わ、私? うーん、話せることがないからなあ」
「好きな人とか、いないんですか」


じっと目を見つめてくる大真面目な瞳はまるで私の目線を縛りつけるよう。そんなに見つめられたら動かしようがなくて、それゆえにまばたきしかできない。
縛りを解くように笑ってみせる。烈風刀くんの表情は真顔のまま。そうだなぁ、と呟くように声を吐く。


「そういうのはよくわからないけど、好きって言われたらどうしようもなくなっちゃうかもしれないな」


意識してなかったのを、無理矢理向けられたとしたら。あまりの衝撃に一気に落ちてしまうのかもしれない。私の知る限りの作り物の恋愛を思い起こしただけの想像は妄想でしかないのかもしれないとは思うのだけれど。
眉を寄せた烈風刀くんが、机に乗っている私の手を握った。ビクリと跳ねることはなかったけれど、じわりと熱が宿った気がする。


「……じゃあなまえは今、僕に好きですと言われたら、どうしようもなくなってくれるんですか」
「……え…、う、ん?」
「どうしようもなくなって、落ちてくれるんですか」


まっすぐ、まっすぐ。私の目線は再び見つめてくる瞳に縛られて、抜け出せなくなった。静かな問いは教室の喧騒のおかげで他の誰にも届かない。
何も答えられないうちに、烈風刀くんの頬が赤くなっていく。ちらっとわざとらしく時計を見ることで私の目線を解放した彼は、微妙に上ずった声を出す。


「えっと、そろそろ授業が始まりますね! 僕は自分の教室に戻ります!」


これまたわざとらしい、それじゃあを告げて彼は逃げるように去っていく。待ってと追いかけることなんてできるはずもなく、ゴン、と音を立てて額を机に押しつける。きっとクラスメイトの誰も私を気にしてはいないだろう。
休み時間終了の鐘は、全然鳴る気配がなかった。





―――

自分の教室に戻って同じように机に額を押しつける烈風刀くん




18.01.31



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