ボルテ | ナノ


自分で髪を切ってみた。
彼の為、なんて言ってしまうと押し付けがましいのだけど、密かに想いを寄せる男の子が可愛いと言った髪型に変える為、自分で髪を切った。


「なまえちゃん、どうして泣いてるんですかぁ〜!?」


みんなが下校し、誰もいなくなった教室。
そこで突っ伏してひっそりとすすり泣いていた私の元へ、その身体には大きめの羽をはためかせ、小さな彼女が飛んできた。
少しだけ顔を上げると、ミオンちゃんが慌てた表情で私を見ている。


「…私ね、髪切ったの」
「はっ、はい! なまえちゃんの髪型、変わってますねぇ!」
「けどさあ、失敗した上に、似合ってないって…」


好きな、いや好きだった彼の心ない言葉が蘇ってくる。
“お前がやっても似合わない”、笑い混じりに言われた時、ネタに決まってると笑いで返した私。だけど放課後、誰もいなくなると、色んなものがじわじわ溢れてきて止まらなくなって。


「わたし、こっちの髪型のなまえちゃんの方がなまえちゃんらしくて好きです!」


ムッとした顔のミオンちゃんが私の髪に触れた。するとみるみる失敗したと思った箇所も、彼の為だけに努力した部分も、昨日のままになっていく。
慣れきった髪型に戻った私、満足そうなミオンちゃん。彼女が髪の毛だけ時を戻したのだ、と理解するのにそんなに時間は要さなかった。


「似合わないなんて言う人より、わたしの為にその髪型でいてください!」


腰に手を当て、興奮の為か朱に染まった頬で言い放ったミオンちゃん。
彼女の優しさとか、可愛さとかに胸が掴まれたみたいにきゅうっとなった。毛先を触って、作らずに笑ってみる。


「ミオンちゃん、ありがとう。私、ミオンちゃんの為に毛先だけ整えて、可愛くいるよ」
「えへへ、なまえちゃんが笑ってくれました!」


指先でミオンちゃんの頭を撫でて、こっそり思う。これからずっと、彼女に可愛いと言ってもらえる様な自分でいよう、と。
夕日の差し込んできた教室を慌てて出ながら、もう一度毛先を弄った。





―――

なかなか難航しましたが、ミオンちゃん可愛い




15.09.08


戻る

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -