彼が立ち止まり、窓へと顔を向けている。つい、目の前の彼に倣って、自分の顔も窓へ向いた。
外には灰色の雲がどよりとかかっていて、雨か雪かと期待してしまう様な空模様だ。
「今夜は雪が降るそうですよ」
「えっ、本当!?」
私の心の内を読んだかの様な烈風刀くんの言葉に、サーバールームに向かっていた足を止めて、窓枠に手をかける。
あの雲は雪雲なのかとじっくり眺めていると、ちょっぴり呆れたみたいな声がかかった。
「今はいくら見てても降りませんから、行きますよ」
「ごめん、ごめん。でもそっか、雪降るのか…」
「すごく嬉しそうですね」
「あ、わかる?」
鼻歌でも歌えそうな、軽やかな気分と足取りで目的地へ向かっていく。彼はそんな私を隣から笑っていた。呆れと、それからほんのちょっぴりの微笑ましさを含んだみたいな、そういう感じの微笑だった。
「雪の夜かあ、なんかロマンチックだし、烈風刀くん、レイシスちゃん誘ってみたら?」
「…そうですね、確かに街のイルミネーションも映えそうです」
でしょ、と返しながら、うっとりと今夜へ思いを馳せる。烈風刀くんの言う通り、雪降る夜にイルミネーションとは、なんともロマンチックな光景だ。それが今夜見れるというだけで、なんだかわくわくしてきてしまう。
浮かれる私の隣、急に烈風刀くんが立ち止まった。つられて立ち止まり、彼の顔を見ると、真顔でこちらを見ていた。
「では、なまえ。今夜は僕と過ごしてくれませんか?」
「…へっ、」
「……レイシスとの予行演習、ということで」
「…あ、ああ、そういうこと。うんうん、なら付き合うよー!」
突然の予期せぬお誘いに目を丸くしたけれど、理由を聞けばああと納得。それならば喜んで付き合おうじゃないか、ちょうど自分も雪の中のイルミネーションが見たい訳だし。
再びルンルンと歩を進める私を追い越して、烈風刀くんは私を急かした。そんなに急がなくともいいのにね。どこか様子のおかしい彼を、私は早足で追いかけた。
―――
本当ならホワイトクリスマスの話になるはずでした
15.12.31
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