その他 | ナノ


※(一応)レイズ設定



お酒に酔ったヒトっていうのは、危険なのかもしれない。
アイゼンさんが好きだと言っていた琥珀心水を買うことができたから、と何も考えず夕食後にお出ししたのが間違いだったのかもしれない。そのまま彼が言うまま、それこそよかれと思って瓶が空になるまで出し続けたのがいけなかったのか、すっかりアイゼンさんは酔っ払ってしまったようでふらふらとお部屋に戻っていった。言われるままに注ぎ続けた自分にも責任があるので、お水は必要ですかとお部屋を伺ったら。


「あ…の、アイゼンさん…?」


返事もなしに扉が開いたかと思えば、一気にベッドまで引き込まれてあっという間に彼の下にされていた。焦って呼びかけてみるも、据わりきった瞳がこっちをじろりと見るだけ。


「あああアイゼンさんしっかりしてください! 私です、なまえですよ!」
「……知ってる、なまえだろ」
「どこのなまえさんと間違えてるのか知りませんけど、私ですってばぁ!」
「あ? 俺の言ってるなまえはお前しかいねぇぜ」


受け答えはしっかりしているものの、解放してくれない辺りがやっぱりおかしい。アイゼンさんが酔っているのはさっきまでの状況を考えても今の行動を見ても明らかなのだけど、酔っているからこそどうにもできない。テンパってしまった頭じゃ打開策もまともに出てきやしない。ご丁寧に右手首を上から縫い付けるように押さえられてしまったため、普通に脱出するのも難しそうだ。
ぐい、とアイゼンさんの顔が近づいてくる。整った顔に思わずドキッとするのはこんな状況だからか。


「…なんだ、やっぱり合ってんじゃねぇか」


かかる吐息はお酒の匂いしかしないのに、さらに鼓動が高鳴るのはちょっぴり悪そうな笑みのせいだろうか。真近でその顔はズルい。熱が頬に集まるのを感じながら、掴まれていない左手で肩を押し返す。


「あ、あの、放してください…」
「放したら逃げるだろ」
「に、逃げますけど…」
「じゃあ放さねぇ」


ニヤリと笑う彼は私を解放する気はさらさらないようで。このドキドキの理由がもうわからない。状況になのか、アイゼンさんになのか。あるいはどっちもか。
どうすれば、と視線を彷徨わせれば、それすら逃がさないというように口づけられた。しかも、奪うような深いもの。絡められた舌は逃げられないし、逃がす気なんてないのだろう。肩を押す手に力が入るけれど、次第に力が抜けていく。それこそ力まで奪われたみたいに入らなくて。


「……んんっ、ぐ、」
「……なんだ、もう限界か」
「ぶはっ、はっ、はあ…っ、」


足りなくなった酸素を慌てて取り込んで、どうして出てきたのかもわからない涙をまばたきで退かす。調わない呼吸を意識させないみたいに残った涙を吸われるから、余計に呼吸がどうにかなりそうだ。


「はあ……、キス、初めてなのに…」
「そうかよ。…貰ったぜ?」
「……なんで嬉しそうなんですか」


調ってきたところで抗議してみるも、全く意味をなさないようで。
なんだか頭がぼうっとしてきた。口に残るお酒の味のせいかな。このままじゃ流されてしまうのはわかりきっているのに、お酒のせいか受け入れてしまいそうだ。


「決まってるだろ、なまえが好きだからだ」


…こんな、お酒に飲まれてる時にズルい。わかってるのかわかってないのかはどうでもいい。自分はきっともう勝てないのだろうから。あんな真剣な表情されたら、お酒の勢いの嘘だなんて思えない。…思いたくないのかもだけど。
好きにしてくださいと言うのは恥ずかしいし、できればこのまま何もなければと願ってしまう。


「…私も好きですから、お願い聞いてくれませんか」


嬉しそうに口元を緩ませるアイゼンさんが、待ったを受け入れてくださるかはわからないけれど。
明日、みんなとクエストなりなんなり行けるかな。





―――

アイゼンさんに奪われる




18.04.25


戻る

×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -