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新年度最初の登校を終え、新年度初下校の間、私は散ってしまった桜たちと、ギリギリ堪えて新入生を迎えてくれている桜たちを見回していた。


「おっ、なまえじゃないか。学校帰りか?」
「ユリ兄! はい、そうだよ。新学期になって、進級しました!」
「そうか…、つい1ヶ月前くらいに入学を祝った気がするんだが、時の流れは早いな」
「やだ、ユリ兄。おじさんくさい」
「おじさ……」


若干ショックを受けている様子のユリ兄こと、ユリウスさんを見てこっそり笑いながら、やけに桜が似合う人だと思う。儚げなイメージがそこまであるわけではないのに、なぜだろうか。もしかしたら、知らず知らずのうちに、私は彼に哀愁を感じているのかもしれない。ある意味では、儚さも感じているのかも。


「…はあ、ところでなまえ。せっかく新学年なんだ、何か進級祝いを買ってやらなきゃだな」
「えっ! さっすがユリ兄、エリート〜、高給取り〜。じゃないや、いらないよー、悪いし」
「昔はあんな素直に甘えてくれたのになあ…」


また遠い目をしながらおじさんくさいことを言う彼を再び傷つけるのは悪いと思ったので、正直に言うのはやめておく。今だって昔ほどではなくなったかもしれないけど、素直なつもりだし、甘えてもいるつもりなのだけど。弟大好きブラコンお兄さんのユリ兄には足りないのかもしれない。ルドガーだって、年齢的にはそろそろゆっくり兄離れしてるはずだし。


「んー、じゃあどうしてもって言うなら、ちょっとだけ付き合ってもらっちゃおうかな」
「なまえが言うなら、どこにでも付き合うぞ」
「新しくできたカフェ、奢ってくれますか、ユリウスさん?」
「勿論だ、構わない」


これから他愛のない話をたくさんするだろうけど、あのカフェからならきっとギリギリの桜が見えるだろうから、ユリ兄に桜が似合う理由が少しはわかるだろうか。
さりげなく呼び方を変えたことに気づかないところが似合う理由なんかじゃないとは、もちろん思うけど。





―――

ユリウスさんならポンと進級祝いぐらいくれちゃいそうですよね




18.04.11


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