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「いやぁ〜、ひどい雨ですね!」


私たちを襲う突然の雨。しかもどしゃ降り。傘を持っていない私たちは必然的に雨に降られない場所に追いやられる。


「大佐のせいじゃないですか!」
「あっはっは」
「なに笑ってるんですか!?」


最悪だ。何故だか大佐に突然「一緒に来てください」と無理矢理つれだされ、あちこちつれ回されたかと思えば、傘も持っていないのにこんなひどい雨にあう。それに加えて、大佐とふたりで雨宿りしなくちゃならないという地獄までついてくるだなんて!


「これ…やむんですかね…」
「さあ? まさか雨に降られるとは……あなたの日頃の行いが悪いのでしょうね」
「………」


あんたにだけは言われたくないです! と叫びたいのをぐっと抑え、隣の人のような意地悪をする雨をジト目で睨む。早くこの人とふたりきりという状況を打破したいのに君がさせてくれないんだぞ、雨くんや。
全然やむ気配のない雨は、まだまだ檻のように私たちをここに閉じ込めておく気満々らしい。


「っくしゅ!」
「おや、風邪ですか? うつさないでくださいよ? 私に」


だから誰のせいだと…! と言いたいのを再びこらえ、静かに上着を頭から被る。
こうなったら大佐なんて放ってひとりで走って帰ってやる。走りだそうとした瞬間、すごい力で腕を引っ張られて後退させられた。


「仕方ありませんねぇ」


涼しい顔で私の腕を掴んでいる大佐は、わざとらしくため息をついてみせる。そして何故かカチャカチャと自身のベルトを外しはじめた。


「ひやああ!? な、何やってるんですか大佐!?」
「あなたの想像しているような事ではありませんよ」


あからさまな呆れ顔で大佐はするすると上着を脱いでいく。そしてその上着を私に羽織らせ、にっこりと笑った。


「あなたの代わりに日頃の行いが良い私が行ってきますので、あなたはここで待っていてください」
「へ? いや、でもそれじゃ大佐が…」
「いいですね、なまえ」


有無を言わせない笑顔の圧力に負け、はいと頷かざるをえなかった。私が了承した事に対し、満足そうに大佐は上着なしで走っていってしまった。こんな雨の中、あんな薄着で濡れに行くだなんて自殺行為に違いないのに。
大佐の上着はやけに暖かく、くしゃみはそれ以上出ることはなかった。もしこれで大佐が風邪をひいてしまったら、私のせいではあるけれどネチネチとうるさいんだろうなあ。そうなったら少しだけお仕事を手伝ってあげようか。イヤミは…上着の暖かさに免じて許してあげることにしよう。

そんな思いも傘を持って戻ってきてくれた大佐のイヤミで薄れそうになるのだけど、それはまた別の話。





―――

妹が冒頭を大佐のセリフみたいとか言うので大佐バージョン




17.09.25



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