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エドワード黒太子様の考えていることはよくわからない。黒き軍才として進化して以来、彼はやけに私にベタベタしてくる。喚んでいない時であろうとお構いなしに出てきては、私の隣をキープする。


「最近エドワード様の顔ばっかり見てる気がする」
「俺もなまえの顔ばかり見ているな」
「いや、原因はエドワード様の方が作っていらっしゃると思うのですが」
「おや、そうか」


明らかに本心じゃない顔で返事してくる辺り、本当に何を考えているのやら。ふたりきりであろうと変わらぬ態度が真意を読ませない。
ベタベタされるのが迷惑というほどではないけれど、あんまり一緒だとなんだかすごく気になってしまうというか。時々じゃなく、いつもだからこそ意識してしまうというか。


「黒き軍才となり…俺にも思うところがあってね」
「思うところ…?」


軍才様の思うところなんて、凡人召喚士の私にはさっぱりわからず。読ませない含みのありそうな笑顔の意味も、さっぱりわからない。エドワード様教えてくださいと言ったって、きっと素直に教えてはくれないんだろうなあとか思ってしまう。


「ふむ…、知りたそうな顔だな、なまえ」
「そんな気を引く感じの言い方をするからですよ…、多分私じゃなくても知りたがる…はず」
「ふふふ、そう意地を張るな」


今度は含みのなさそうな笑みを見せて、私を抱きしめた。ぱちくりとまばたきをする私を置いてきぼりにして、彼は語りだす。


「俺はなまえを今まで守れていなかったからな…」
「へ? エドワード様は十分…」
「いいや、なまえにばかり背負わせていたからな」


よしよしと頭を撫でられる。抱きしめられたまま、解放はされないみたいだけれど。
エドワード様は私をあやすみたいに頭を撫で続けた。よくわからないような、優しさに涙が出そうなような。


「これからは俺も指揮を取る。犠牲は俺の指揮によるものだ」
「それは…いくらなんでも…」
「戦略を立てるのが俺の仕事のようなもの、なまえは何も気負わなくていい」


静かに耳元で、それが俺の仕事なのだから、と。いつも、エドワード様だってそんな思いをしてきたはずなのに、私だけをそこから解放するつもりなのですか。慣れている自分がひとりで被れば問題ないと。
それでも、こんなに軽くなった気がして。エドワード様の言う通り、私は荷物を誰かに肩代わりしてほしかったのかもしれない。


「…半分、エドワード様に預けます」
「全部でいいと……、いや、我が召喚士様が言うのなら、そうさせてもらおうか」


彼の顔は見えなかったけれど、笑う気配を感じた気がする。
これからは今まで以上にエドワード様が隣にいることが多くなるのだろう。それが嬉しいような恥ずかしいような不思議な気持ちで。ただ、本格的にエドワード様が指揮を取るお姿が見れるのが楽しみだと、それだけは。
任せておけと自信たっぷりな不敵な笑みが頭に浮かんで、目の前の彼にわからないよう、少し笑った。





―――

エドワード黒太子はどう考えても進化前に比べて闇堕ちしてる




17.05.20



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