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彼の背中は、とてもまっすぐだ。ピシッとしていて、見ているこっちも背筋が伸びる。人のふり見て我がふり直せ、とはちょっと違うかもしれないけど。


「なまえ、後ろ!」
「は…、わあっ…!?」


気づけば後ろに敵がいて、今まさに私を攻撃しようとしている真っ最中だった。
――よそ見しすぎた…!
ギラファの声かけのおかげでなんとか防御の体勢を取れた私は、それほど大きな怪我をせずに済んだ。ギラファが咄嗟の判断で武器を片方投げてくれたのも大きかったけど。


「気をつけてくれ…。主人は俺らほど丈夫な身体にはできていないんだから」
「ごめんなさい…。でもありがとう」
「礼はいいから、まずは敵に集中してくれ」


ギラファのまっすぐな背中が私を庇うように前に立った。
私はというと、彼に今は言えないが、どうやら足を痛めたらしく、まともに動くことができない。ひとまずまだ魔力が尽きていないため、もう一体モンスターを召喚してやり過ごすことにした。


「ひとまず終わった…な」
「うん。ごめんギラファ、迷惑かけて」
「いいや。それより…」


ギラファがジト目でこちらを見て、私の肩をグッと押す。思わず顔を歪めるのを見れば、呆れたようにため息をついた。


「歩けないんだな? というか、歩くな」


有無を言わさずに、彼はまっすぐな背中を私の為に曲げて、軽々と背負った。
ピンと伸びた背筋を片手でなぞってみる。驚いたように肩が跳ねた。


「ごめん、くすぐったかった?」
「…主人、反省してないだろ」
「反省はしてる…つもりです。でも、あんまりにもギラファの背中がまっすぐだからさ」
「俺の背中がなんなんだよ…。でもじゃないだろ、理由になってないし」


君の背中に見とれて怪我をした、とは言えずに笑ってごまかす。彼は息をつくだけでそれ以上何も言わなかった。


「あ、そういえば」
「なんだ、どっか用事か?」
「ギラファ、あの時名前呼んでくれたね」


恥ずかしいのか、返事がない。無言で脚が進んでいく。
しばらくして、小さい声が聞こえてきた。


「結構、焦ったんだぞ」
「頼りない召喚士ですみません…」
「俺は軍服ってやつを着ているけど、なまえのために戦ってるっていうのを忘れないでほしい。俺の主人はなまえなんだからな」


ギラファの耳を見てみる。全く赤くなっていない。照れなんて無しの、本気の言葉だと悟った私は、彼の背に顔を埋めて頷いた。私の方が、なんだか照れてしまったから。


「ギラファのまっすぐ伸びた背中を見てるとね、とっても安心するの。だから、私の為なんて言ってくれるなら、ずっとまっすぐでいてね。そうしたら私、ギラファの為に立っていられるから」


彼は今度こそ照れてしまったのか、なんにも喋らなくなってしまった。でも、それは自分も同じだから、かえって都合がいい。
無事帰り着いたら、面と向かってお礼とか色々、言えたらいいな。





―――

死亡フラグ…?(ギラファは進化後がより好きです)




17.02.25


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