今、私の右手首には手錠が片方だけ着けられている。これだけでも普段と違う、異常なのに、更にはこの手錠で繋がれた先が問題だ。
なんとこの手錠、ハヤトの左手首と繋がっているではないか。
「…ハヤト、私がちょっと寝てる間に何があったの…?」
「さあ? またヒスイじゃないのか?」
「えっ…、クラマの次は私なの…」
どうにも不自由で、違和感のある右手首を動かせば、当然隣の彼の左手がついてくる。これは困った、私も不便だが繋がれたハヤトもたまったもんじゃないだろう。今は元気なんだし、訓練もしたいはず。
「ちょっ、ヒスイちゃん探そうか!」
「そうだな。でもさっきからヒスイを見ないんだが…」
「ここにずっといたらそりゃ見ないでしょ…。とりあえず探そ……っと…!」
「大丈夫か?」
勢いに任せて立ち上がろうとした私を阻む手錠。そんな私を支えてくれた彼が、手錠を見ながら目を細める。「…ゴールデンじゃないな」ええ、全くその通りです。
ふたりで手錠を着けながら、GCG本部内を歩き回った。途中ですれ違う人たちが変な目で私たちを見るのを感じながら、思い当たる場所へ行っても彼女はいない。羞恥心を抑えながら行ったGCGベースにもいなかった。ヒスイちゃんは、どこにもいない。
みんな出かけたと言っていたし、ここまでくるとハッキリ言ってもうお手上げだ。いったいどうして私に手錠をかけたんだ、クラマならまだしも!
元の場所に戻り、ため息を吐く私に彼が口を開いた。
「…このままでも、いいかもしれないな」
「こ、このままでもって…?」
「このまま、なまえと繋がれたままでも」
「えっ…」
「何言ってるの、ハヤト」と紡ごうとした口が動かない。冗談の様な言葉のはずが、彼の金の瞳がまっすぐ、真剣にこちらを見ているものだから。
何これ、もしかしてハヤトか私が熱でもあるの?
「それ…本気?」
「まあ、本気だな」
「いやいや、不便でしょ! 戦う時とかどうするの!?」
「なんとかなる」
ならないよ!とツッコミを入れようとした私の唇は、またも働かせてもらえなかった。ガイスト出現警報が私の言葉を遮ったのだ。
しかも驚くことに、いつの間にか手錠は外れ、私の右手は自由になっていた。
「…行ってくるよ、なまえ」
「あ、うん…、行ってらっしゃい」
ぼーっと自分の右手首を見ても、とりあえず跡は残っていない。いったい何だったんだと首を傾げる。
「あれ…? でもハヤト、私の隣で寝てたの…?」
まさかハヤトが…、と変な方向に私の思考が働くが、寝ていた私には何もわからない。まあ、真相はこの手錠のみが知ると言ったところか。
「でもあのコハクちゃんの目…。まさか、ね」
手錠はもの言わず、そこに寝転んでいた。
―――
あの手錠回を観たら…つい
14.04.25
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