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「うわっ…!」


保健室にて、私は思わず悲鳴に近い声を上げた。
何故そんな声を上げたか。その原因といえるのが、フラン先生に「彼をお願い」と語尾にハートを付けて任された、彼ことディーノ先輩。


「何でそんな怪我…!」
「…俺の不注意だ。さっきのクエストでお嬢様が危機に陥ってな」
「…それで、ディーノ先輩が?」


彼の腕に残る痛々しい傷にキュアーをかけながら、目を細めた。
彼のアシュレイ先輩への忠誠心はそれは見事なものだ。だけどそれはどんどん、彼の中の彼の優先順位を下げている。あまり怪我をすることはないディーノ先輩だけど、時々アシュレイ先輩を庇ってこうやって傷を作るのだ。

先ほど、自分がキュアーをかけて治した彼の傷があった場所を撫でてみる。もうすっかり傷は消えているのに、まだそこに痛みが残っている気がして。


「…泣きそうな顔はやめてくれ」
「え…、私そんな顔を…?」
「俺の傷はもう癒えた。すまないな、礼を言う」
「あ、待ってください!」


傷が癒えた途端、応急措置に着けていたのだろう血の滲む包帯を解いて保健室を去ろうとする彼を思わず引き留めてしまった。もう特に彼はここに用はなくなっただろうし、私もこれ以上彼にすることはない。いったいどうしたいというのだ、私は。


「……どうした?」
「や…えっと…、心配、で…」
「心配?さっきも言ったが傷はもう癒えた、心配ない」
「でも、ディーノ先輩がまたそんな怪我を負ったらと思うと…」
「お前はまた…」


呆れた顔でため息でも吐きたそうな彼は、軽く息を吐き出して私の名前を呼ぶ。長身の彼を見上げた私は、彼を見た瞬間に驚きを隠せなかった。だって、彼が笑っているものだから。


「そうやって俺の心配をするなまえが俺は心配だ」
「私じゃなくて自分を心配してくださいよ!」
「…だが、なまえの気持ちは嬉しい。変な言い方だが、お前がいるから俺は怪我できる」
「え…、」
「なまえが回復してくれるから、俺は怪我を負っても冷静でいられるんだ」


「これからも頼むぞ」そう言って先輩はスタスタと食堂へ歩いていった。それは、マギとしての私の魔法が役に立っているということで…。
変身を解いて、自分も食堂へ向かう。彼の笑顔のせいで熱い頬は気にしない。


「ディーノ先輩、回復は任されました!」
「わざわざそれを言いに来たのか?」
「…ご一緒、いいですか」
「ああ、構わない」


でもやっぱり、なるべくなら傷は見たくない。彼に酷い傷がつきませんように、とこれを食べ終わったら大聖堂で祈るつもりだ。





―――

ディーノ先輩って何でこんなに難しいの…




14.04.20


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