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「今、手が離せないのでクラマさんを探してきてください」なんてヒスイちゃんに頼まれるのも今日で何回目だろう。いい加減大人しくヒスイちゃんの元にいればいいのに。だからハヤトと手錠で繋がれたりするんだよ。
まあそれはいいとして、私の探す手間というのも一度考えてみてほしい。未だ変装した彼に出会ったことはないが、それでも忍者の末裔を探すのはなかなかに骨の折れる作業なのだと気付いていただきたいものだ。


「クラマー?どこー?」


お願いだから隠れていないで出てきてほしい。こっちもそんなにクラマだけに構っていられるほど暇じゃない。


「あ、そこか!」
「ゲッ、なまえ!」
「ようやく見つけた…」


ゲッ、とか言いつつそんなに嫌そうな顔をしないのが、いつものクラマだ。ほら、今だってもう私に向かって「よう」なんてフレンドリーに片手を上げた。表情的には「ゲッ」というより「あ、」とでも言いそうな彼に私は毎度ため息を吐く。もちろん今回もため息は忘れない。


「何でいつも見つかっても平気そうな顔してて、ちょっとでも逃げようとか考えないかなぁ…」
「何だよ、逃げてほしいのか?」
「いや、そうじゃないけど…。でも、だったら始めから逃げないでくれるともっと嬉しいかなあ」


私がジトッとした目で見ると、彼はニッ、と全く反省のない笑みを向ける。ほんのちょっぴり、頭に痛みを覚えた。額に片手を当て、今度は眉を下げても彼に反省の色は浮かんでこない。


「だってよぉ、なまえ」
「何、頭痛くなってきたんだけど」
「お前来るじゃん、俺いなけりゃ。だからだよ」
「…え、私を釣ってたってこと?」
「ま、そうなるな。こうでもしなきゃ、なまえとふたりっきりっつー美味しい状況が味わえないっつーの」
「お、美味しいの?ふたりっきりが?」
「おう」


いきなり爆弾の様な発言をされて、それに対する確認の為の質問にも何のためらいもなく即答されて、私は困惑していた。だってそれって、私とふたりきりになりたかったってことでしょ?


「なまえといる為に、これはやめられないんだっつーの。じゃあな」
「あ、クラマ!逃げるの!?」
「いーや。ヒスイのとこ行ってくるよ。今日のなまえとの時間は終了だ」


また頑張って探せよ、とやっぱりあの笑みを浮かべる彼にもう私は返す言葉がない。
ああもう、してやられた。この赤い顔で、明日からどうやってクラマを探そう。
悶々と思考を巡らす私を、さんごちゃんが不思議そうな顔で見ていた。





―――

変装してない自分を見てほしいんだ




14.04.03


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