政府組で弦楽パロ小話



「刻み、遅いよ」
 気持ちよさようにメロディーを弾いていた鷹斗が突如手を止めた。メロディーラインが消え、円とレインも手を止めれば場は静まりかえる。余韻がぶわりと身体に纏わりついたのも一瞬のことだった。
 そして刻みが遅いと言われて心外だ、という顔をしたのはレインだった。
「失礼ですねー。今のところはアレグロですよー。ボクはそのテンポで刻んでましたー」
 不満げに言うレインから、疑いの眼差しが刺さる。
 ずれてたの、君ですよね? その意味はこんなところだろうか。
 鷹斗はどことなく冴えない。そこまで刻みが遅いことが気になるのか。鷹斗が完璧主義だとは思わないが、これはいかんともし難い。
 大体、合奏で彼の理想のレベルをいくにはどの程度練習すればいいのか。少なくともちょっとやそっとの練習ではどうにもならないだろう。
 しかし、それよりも円の心を遊ぶようにくすぐって苛立ちを助長させているのは、鷹斗が求めるレベルが、自分の到達できないところにある訳ではないところだ。実際、鷹斗の指摘は全くもってその通りであり――間違っていないだけに何も言い返すことが出来ない。その人のできる限界を見極めて要望出すところがさらに苛立つ。
「……あなたたちは知らないと思いますけど、ヴィオラ、大変なんですよ」
 ヴァイオリンとチェロのいいとこ取り――と言えば聞こえはいいが、つまるところどっち付かずの低賃金重労働的なパートである。
「そんなこと言っても君が選んだんじゃないですかー」
「……」
 事実なだけに黙るしかない。ここでもぼくは彼らのいいように扱われるらしい、と円はため息をついた。
「すみません、遅かったのはぼくです」
「そう。次は気を付けてね」
「きちんと譜面見てやってくださいねー」
 その身長ならいっそ楽器に潰れてしまえと。それもコントラバスならまだしも、チェロには絶対的に敵わないが。
 このひとが上司だというのは分かっていても、こう思うのは罰当たりではないはず、だ。いや、楽器に対しては随分と失礼なことを思っているが。
「……はい」
 円はそんなこと思いつつも頷いた。




121104
鷹斗→ヴァイオリン
円→ヴィオラ
レイン→チェロ
だったらいいなぁ、と。個人的にトラには三味線引いて欲しいです
ついったに上げたもののさるぺーじ!



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