ドアを開けると光が入ってきた。その眩しさに私は目を細めることしかできなかった。




「わあ、凄い気持ち良い」ね、と彼女は私の方に顔をむけ同意を求めるように言う。

「ああ、流石にまだ寒いけど気持ち良いな」



 病院の屋上。私は彼女を車椅子に乗せ連れてきた。風が心地よいぐらいに吹いており、下を見ると木々がなびいているのが分かる。

 彼女は車椅子に座りながら両手を上にかかげ微笑んでいる。普段病室に籠りきりの彼女には珍しいのか、懐かしいのか。とにかく久しぶりに見た嬉しそうな表情に私も嬉しくなった。






 ――さんの身体は、もう長くは持ちません。


 薬品の香りが漂う廊下で主治医からさっきそう言われた。何時も通り彼女の病室を訪ねようとしたら、廊下で呼び止められ言われたのだ。


 私は彼女の笑顔が好きだった。初めに花に例えたのは誰だっただろうか。本当に花のような女の子。それが、何も感じないし笑いかけてもくれないのかとおもうと胸が苦しくなった。




 だが、それ以上に、彼女の最後を私以外の男もっていかれるのかと思うと憎くなった。





 彼女は私のものだ。 彼女の心も身体も最後でさえも他のやつなんかにやりたくはない。もし、そんなことが起こったなら私は全てをなげだしてもそいつを殺してしまうだろう。




 だから、私は――――。


 ずぶりと生々しい音をたてながら銀色の刃を彼女の胸に突き刺した。果物ナイフのソレ。案外簡単に彼女の身体へ入っていったそれは最奥の心臓を上手く仕留めたようだった。


 声にならない叫びが彼女の喉からでるのを感じた。でもね、君が悪いんだよ。私は言う。他の奴なんかに君を渡したくなかったんだ。分かってくれるよね。


 最後に彼女の瞳に映ったのは、驚きと、苦しさと、悲しみ、そして私。


 最後に映ったものが私ということが何よりも嬉しくて泣いた。






(090311)
真紅の薔薇に愛を


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