雲一つない青い青い空。金属特有の高い音を響かせたボールがあがる。

 グランドに響く声が気持ち良い。
 湿気を吹き飛ばしてくれるほど空は青かった。心地よいかぜがたまに砂埃を巻い上げる。




「気合い入ってんな」
 汗を拭きながら慎也が話しかけてきた。

「当たり前だろ」水を飲みながら言う。冷たいそれが喉を通る感覚が心地よい。「これで最後だからな」

 チームメイトも各々の休憩時間を過ごしている。明日が試合ということもあってか、休憩時間を使ってまでバッティングのフォーム確認をしたり、投げ込んだりと自主連しているメンバーもいた。気合いは十分。士気も高い。あとは勝つだけだった。



「最後、か」
 慎也は遠くを見ながら感慨深そうにに言った。「これで―――」このグランドとも、この土の匂いとも、この真っ青な空とも、この身体中を巡る熱とも。「最後なんだな」


 1、2年前は自分がこんな風に思うだなんて考えもしなかった。ただ、がむしゃらに目の前にあるものを追いかけて走ってきた。


「寂しいな」
 ぽつり。思わず言葉が漏れた。

 それは、本当に思いもよらず溢れた言葉だった。試合前になにいってるんだろうな、そう慌てて慎也を見るとあいつも考えこむような表情をしていた。


「だからさ、」だんまりだった慎也が振り向き言う。「明日、勝とうな。勝って、また1日でも長く野球ができるように頑張ろうな」






 空はまだまだ青い。いや、青いのは僕らの方かもしれない。

僕らの夏はまだ始まったばかり。終わりじゃない。スタートラインに立っているんだ。



 神様へ。願いがもし叶うのなら、僕らをもっと長く走らせて下さい。








(090310)
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