ジリジリと照りつける太陽。
真っ青な空。
土の匂い。
額を伝う汗。
そして心地よい緊張感と金属音。
「夏だ、な」
そう言って一樹は空を見上げた。
鷹か、雲雀か、何か名前は分からないが、鳥が空を自由に飛んでいる。
一樹は汗をユニフォームで拭い、チームメイトを振りかえる。
「よし! ラストだ! 締まっていくぞ!」
その声に答えるグランド中の声。
一人ひとりの声が合わさり、グランドを揺らすかの響きを一樹に伝えた。
身体中の熱が溢れだすようだ。
一樹は息を吸い込み、一拍おく。
ゆっくりとした投球モーション。
そしてそのしなやかな身体から出される白球。
刹那。それは瞬きする間に捕手のミットに綺麗に収まった。
胸の奥でなにか熱いものが溢れだすのが分かった。鼓動が早くなる。息が、感情が、身体が高ぶる。
熱い。
この熱があるから野球はやめられないんだ。
空高く鳥が舞い上がった。
(090317)
抽象的なものが好きだった頃のもの。無理ありすぎて泣ける。