「あそこですぜ」
よくアニメで映されていた並木を通ると、見覚えのある屋敷が見えてきた。
しかし、窮鼠はそこまでは行かず、自身が見えないように確認をとってから言葉を発していた。
「ありがとう」
想像以上の迫力のある門構えは、遠くからでも分かるほど、アニメでは伝えきれないほどの趣があった。
木の陰に隠れる窮鼠に礼を言うと、窮鼠の横を通り過ぎる。
「あ、姐さん……」
少し離れたところで、窮鼠が小さく言葉をかけた。それに気づいた鯉乙は、窮鼠を振り向いた。
「気を、つけて……」
人を気にかける仕草から、窮鼠は元は素直で優しい者だと言うことが伺えた。やはり、あれだけではこの「ぬらりひょんの孫」という世界は伝えきれないのだろう。
「窮鼠も、三代目には気をつけてね」
ありがとう、と声をかけると、窮鼠は鯉乙の言葉に首を傾げたが、それでも頷いて鯉乙に小さく手を振った。
鯉乙はそれに微笑むと、奴良組へと足を進めた。