気がつくと、そこは裏路地に近い場所に位置していた。
そこは浮世絵町とは思えぬほどの秘されっぷりで、あまり綺麗とは言えない。
まぁ、どこの国でも、綺麗であれば汚いところも存在するのだ。仕方のないことなのだろう。
そう思いながら、スタスタとその路地から離れようとすると、後ろから走る音と共に、「待てー!」という叫び声が聞こえた。
何だろう、と振り向くと、そこに見覚えのある顔が通り過ぎる。普通に見ると、ただの万引き犯だろうが、あれは絶対に窮鼠に間違いない。
「グットタイミングっ!」
窮鼠を追いかけるヤクザものを追い抜かし、畏れを発動させる。
周りから見れば、万引き犯が消えた、としか見えないだろう。ヤクザたちは「どこ行った?!」と叫びながら、逃げる窮鼠を追い抜かし、どこかへと走って行く。
窮鼠は呆気にとられたのか、ぽかーんと口を開き、立ち止まっていた。
鯉乙はすぐさま近づくと、ヤクザものが探しているうちに、と手を取って表へと出て行った。