本当にこいつの匂いは良い物で、もしかしたらフェロモンでも出ているんじゃないだろうかという馬鹿な考えが浮かんで打ち消そうとも思ったが、こんな世界でしかも直井は猫耳に尻尾まで自分で作ってしまっているんだからありえない話でもないのかもしれない。 それでもいいさ、どうにでもなれ。 「ひんっ、音無さんっ、あっあっ、あうっ」 「うっ、んっ、直井……」 いつまでも直井の香りを堪能していたいが、もう限界が近い。 「俺……やばいっ」 「はんっ、あっ、はあっ、ひっ、ぼ、僕もですっ」 「お前ん中すげぇっ……」 「んっ、おとなしさぁあんっ、うっ、はぁあっ」 「直井っ、好きだっ、好きだよっ」 「っ、うっ、ふうっ、おとなしさんっ、ひゃあっ、ふぁああああッ!」 グイっと直井の中を穿つように腰を押し付ければ、直井のネコミミがぎゅうっと寝て身体をブルブルと震わせながら果てて、俺も追いかけるように直井の肩をぎゅうっと握りながら中にぶちまけた。 もう限界まで犯しているというのに、それでも腰を引き寄せて、さらに中に侵入しようと腰が揺れる。 尻だけを高くして俺を受け入れている様は、精液を全て逃すまいと頑張っているようにも見えて可愛く思えた。 「ひぃんっ、ふぁあっ……ぁあ……」 「直井……」 中に全てを出し切ってふうっと深呼吸をする。 あれ……?男だし妊娠の心配は無いからといって中で出してもいいんだろうか。 当たり前のように中出ししてしまったけれど。 掴んでいた肩を離すと少しだけ赤くなっていた。 身を起こして、まだ自分のペニスが入っているそこを見る。 赤く濡れたそこはイった余韻なのかまだぎゅうぎゅう絞めつけていた。 「…………」 荒い息をつきながらほんの少し溢れた精液に濡れたそこを見ていると、一度は解消された性欲が戻ってきそうだ。 それは流石に直井がもたないだろう。 身体を離して完全に萎えてしまったペニスを抜くと、それを伝って精液がトロリと溢れ出す。 ぎゅっと締まって、力が抜けて、その拍子にまた精液がこぽっと溢れた。 ゆっくりと支えていた手の力を抜いていくと、そのままベットに沈んでいった。 「おい……大丈夫か?」 どんな傷でも治るし生き返る世界だけれど、つい聞いてしまった。 うさぎの耳じゃないからそれ程動かないけれどネコミミがピクリとこちらに向けられていて、本当に聞こえているんだとわかる。 緩慢な動作だけどゆっくりと身体を捻ってこっちを向いた。 その顔は涙に濡れていて、どこかぼんやりとしている。 「平気ですよ……んっ」 仰向けになろうと足を動かしたところで直井が眉を寄せた。 「痛いのかっ?」 「うっ、違いますっ……音無さんのが……」 「あ、そっか、わりぃ……」 「いえ……そんな……」 見れば直井の内腿には俺の出した精液が伝って汚していて目に毒だ。 布団は……ぁあ、蹴っ飛ばしたのか。 ベットの後方にまで蹴られた布団を引き寄せて、大雑把に直井の足を拭いてやり場所を変えて顔も拭いて綺麗にしてやった。――直井は布団が汚れる事を気にしていたが。 それよりも精液に塗れたお前を見ていたらまたしたくなるんだよ。 「音無さぁん……」 まだ太腿に残っていた精液を布団で拭いとっていたら、直井が首に腕を纏わり付かせ誘うような声音で呼びかけてきた。 いや、きっと本人にその気は無いんだろう。 セックスの後のほんの些細な戯れのつもりなのかもしれない。 「なんだよ……」 少しぶっきらぼうな言い方になってしまった。 だが俺が冷たいのはいつもの事だ。直井は気にせず俺の唇に自分のそれを押し付けてきた。 そうされれば舌を突っ込むのは自然な流れだろ? 唇を舐めても開かないから強引に歯列に舌を捩じ込もうとしたら、やめてくれと言わんばかりに胸を押された。 その反応が癪に触り肩を掴んでぎゅうっと抱きしめてやったら、ぷいっと顔を背けられた。 「だっ、ダメですよっ!」 「何でだよっ」 「また貴方を傷つけてしまいますっ!!」 「はぁ?」 ああ、牙でか。 「でもすぐ治るんだし……構わないさ」 「僕が構うんですっ、ちょっ……音無さんっ」 唇を寄せるも逃げられてしまい、頬に口付ける事になった。 頬も柔らかくていいけれど少ししょっぱいな……涙が染みているんだろうか。 「じゃあそれ取れよ」 「そんなっ、……すぐには無理ですっ」 せめぎ合いつつも説得を図るが直井も引く気はないようで、イライラが募る。 自分からしておいてなんなんだよ。 こうなれば力尽くだ。 「なら仕方ないな」 「おとなしさっ、んぅうっ……んっ!」 圧し潰さんばかりの勢いで胸を使って直井をベットに縫いとめる。 額に手を置いて顎を持ち上げ顔を固定して、無理やり口付けてもまだ抵抗は止まない。 諦めの悪い奴だな。 「ふうっ!んっ、んっんっ」 額に置いていた手で頭を撫でてネコミミを掴んでやれば、やっと抵抗する手の力が弱まった。 「だめっ、んうっ、ふっ、うっ……おとなっ、んっ」 キスの合間にも否定の声が聞こえるが、無視するのがここは正解だろう。 ネコミミをクシクシと揉み撫でながら、ピチャピチャと音が出るように口内をかき回す。 舐め上げるような動きをしなければ案外牙に傷つけられる事もなかった。 「ふあっ、っ、んっ……」 口を開いた拍子に牙を吸うようにして愛撫するが流石にそこは感じないようだ。 まぁそうだろうな。 もしそうでなかったら喋る度に大変な事になってしまうだろう。 「んっ……」 唇を離してみれば、口の端から唾液が垂れていた。 それを舌で舐めとって顔を上げると、直井が目を開けた。 「大丈夫だったろ?」 「そうですが……それは、」 「結果論でもなんでもいいじゃないか」 第一これで出来る傷なんてほんの些細な物だ。 「俺がしたいんだからさせろよ」 「…………はい] 面はゆそうに視線を泳がせながらも返事をする。 本当に可愛いなぁ……だがあまりそういう所を見せられると……。 俺の下で直井が身を捻り、横向きになろうとするが空間が足りなくて不可能だ。 まぁ俺が少し身体を離せばいいのだが、その思考に至る前に直井の様子を訝しむ。 なんだかモジモジとしているように見えるのだ。 「どうした……?」 「いえ、なんでもありませんよ!」 本当になんでもないなら俺の質問を疑問に思うはずだ。、 何かおかしい。 「どっか痛いんなら言えよ」 「いえ、そんなんじゃ」 「んじゃどんなんだよ……」 ぁあ、ひょっとして俺が重くて苦しいのか? キスをする時に体重をかけてそのままだった。 「…………」 「あっ、あのっ!」 ああ、そういう事か。 「お前元気だなぁ……」 「そんな事ないですぅっ!」 泣きそう。 少し身体をずらした時に触れたそれ。 見れば直井のそこはまたも自己主張をしていた。 直井にとっては大失態であろうが、俺にとっては嬉しい誤算だ。 もう一回ぐらいしたかったけれど直井が辛いだろうと思っていたから。 言えばこいつは初めてでも無理して俺に合わせようとするから遠慮していたのだが、どうやらただの骨折り損だったようだ。 「いつもはこんなんじゃっ……本当にっ、あのっ」 「へえ……」 いつもは、というのはオナニーの事を指しているのか? こいつがそういう事をしている所も見てみたいがそれは次の機会でいいか。 「なんでこんなっ、……お、音無さんがコレに触るからぁっ!」 そう言って頭を抱えるようにして猫耳を両手で覆い隠す。 そこまで慌てなくてもいいだろう……。 「それで?もう一回するのか?しないのか?」 「え……あ……うっ……」 ずるずると直井の手が自分の頭に指を立てながら下ろされて、長めの髪に絡められる。 言い淀んではいるが、尻尾がそろそろと俺の腰に巻き付けられ答えを言っているような物だ。 これは無意識なのか? |