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いつからだろうか、俺は直井が可愛いと思うようになってしまった。
チョコチョコと付いてくる様はさながらカルガモの子供のようで。
最初は保護者的な意味合いが強かったんだろう……なんだかんだ言ってあいつはただのガキだから。
とかなんとか思っていたはずだが最近のそれは何か違って。

「もし貴方がどうなっても、僕だけは見方ですからっ……」
とか手を握りながらキラキラした目で言われた時はもう……。
何だコイツ、男のくせに可愛いな。
そんなに顔を近づけやがって、キスするぞ。
とか何とか色々な考えが頭を廻って、思わず舐めるようにその顔を見てしまった。
なんとか表情に出す事はなかったが、不自然なくらい真顔になっていた事だろう。
その後ゆりの言葉に合わせれば、直井は俺の考えに全く気がついていないようだった。

ん?この時から既に直井を気にしていたのか?
俺は頭がおかしいんだろうか。
日向よりはマシなはずだが。

いや、だがしかし最近の俺の行動を考えれば日向よりもおかしいのかもしれない。
俺の気も知らないで纏わりついてくる直井の胸ぐらを掴んで短いキスをしてやった。
ズレた帽子もそのままに直井は何が起きたかわからず惚けていたが、直井よりも俺の方が驚いていたと思う。
頭の中が真っ白になって、思わず直井の帽子を取って遠くに放り投げていた。
フリスビーのようにくるくる回って綺麗に飛んでいく帽子に直井はさらに驚いていたが、「行けっ!」と命令すれば頭に?マークを沢山飛ばしながらも追いかけていった。
宙を飛ぶ帽子を見ながら走っていたため、直井は途中ですっ転んでしまってそんなどんくさい所も可愛いと思う。

他にもある。
購買でクリームパンがリニューアルされたとか何とかで、直井が部屋まで持って来た。
これが美味しい、あの本が面白いとかなんとか言って直井はよく理由を付けて俺の部屋に来ていたけれど、キスをしてから来たのは初めてだった。
「お口に合いますか?」と上目遣いで言われたのにやられたのか、自分の指についたクリームを舐め取る姿にやられたのかどうかはわからないが、俺は邪(よこしま)な思いも胸に抱(いだ)かされていた。
ソファが無いのでベットに座らせているけれども、そのせいだろうか。

パンも食べ終わり飲み物も飲み終わり、間がもたない。
何か話題はないものか。

「お前ってオナニーとかすんの?」

俺の口から出たのは最低な質問だった。
直井が固まる。
アワアワとしながら何か言っているが言葉を成していないので、何を言っているのかさっぱりわからなかったが、言いたい事はわかる。
突然何を言っているのかと問いたいのだろう。
だが顔を赤くしてどもる様は、そういった事実がある事を伺わせる。
こいつがしている所か……想像出来ないな……。

「ぼっ、僕はっ、あのっ、そんなっ、僕っ」

恥ずかしそうにパンの入っていた袋で顔を隠すが、透明だから意味なんてないし耳まで真っ赤にしている。
こういう話は苦手なのか。可愛いな。
まぁ直井が女の子をリードしたり、男同士で下ネタを話したりしているイメージなんかないしな。

「何?した事ないの?」
「うっ……」

さっさと嘘でもなんでも言えばいい事に言葉を詰まらせる。
俺に嘘はつけないのか?

「やり方がわからない?そんな事はないだろ?」

直井の両手をパンの包装ごと抑えて顔を隠せないようにする。
言葉につまり俺の目を見てからゆっくりと目を逸らす。

「ぼくは……」

きゅっと目を瞑り口を開いて発言しようとするが、ぎゅっと噛みしめて言葉を飲み込んだようだ。

「わかんないなら手伝ってやるよ」
「……えっ?……へっ?ぇええええっ!?」

ゴミを奪って丸めてゴミ箱に放るが、ゴミ箱の縁に当たって床に落ちる。
まぁ後で捨てればいいので、今は直井だ。
驚いて後ずさるが、両手は俺が捕まえている、大した距離にはならなかった。

「なっなななっなにをっ何をおっしゃってっ、えっ!?」

動揺している直井を捕らえたまま、腕に体重をかけてベットに押し倒す。

「音無さんっ!?えっ、あのっ、うそっ、じっ冗談……ですよね……?」

にっこりと微笑んで見せれば、眉尻が垂れ下がりなんとも情けない表情が帰ってきた。
直井は冗談だったらいいとでも思っているんだろうな。
本当に困った表情をしている。
止めてやればいいのだが、俺に全くその気がない。
何故こんな事をと直井は思っているかもしれないが、俺自身どうしてこんな事しているのわからいのだから答えてやる事はできない。
ただ頭に血が昇って、困惑し恥ずかしがっている直井に酷く気持ちが昂っているのはわかった。

「え、あっ、ちょっと待って下さいっ」

制止の言葉を無視して、学ランの裾から手を忍び込ませシャツを引っ張り出し、真っ白な腹に手をついて押さえ、ベルトを外しにかかった。

「うそっ、おとなしさんっ!」

直井は自由になった手で俺の行動を邪魔するが、そんなに力が込められていないのか阻止する事は出来なかった。

「遠慮するなよ」
「そんなっ、違いますっ、からかわないで下さいよぉっ」

大きな瞳にうっすらと涙が浮かび、声が細くなる。

「そんなんじゃないって、落ち着けよ、これくらい普通だろ?」

身を起こそうとするので、腹から胸に手を滑らせて押さえ直した。

「どこがですかっ」
「いやマジだって、触りあいっこぐらい普通にあるから」

嘘だ。

「え……そんなのっ……」

泣きそうに細められていた目が開き俺を見つめる。
オイオイこんな嘘に騙されないでくれよ。

「した事ないのか?」
「え……」

無いとわかっているけどわざと聞けば、直井の目から涙が引っ込んでいた。
軽いカルチャーショックでも受けているのだろう。

「うわっ?なっ、何をっ!?」
「触ってる」

直井が俺の嘘を考えている間にベルトは抜き取りくつろげたスラックスと下着に手を突っ込んだ。
聞けば分かる、というより感じれば分かる事にも答えてやれば口をパクパクさせていた。

「んっ」

まだ反応を示していないペニスを掴み根元から扱くと、ピクリと膝がゆれる。
ゆっくりと揉むようにしながら少しずつ扱いていけば、段々と芯を持つそれ。

「んうっ、ぅうっ」

目をぎゅっと瞑り、片腕を口元にやって声を抑える。
出来れば声も聞きたいんだが、今は贅沢はやめておこう。
今はってなんだ、次もあるのか。

「ふうっ、うっ、んっ」

硬度を増して来たので、手を亀頭部分に滑らせると濡れていた。
カウパー液を指に絡ませ、先っちょを指の腹でくるくると撫でてやると、眉をハの字にさせて直井が呻く。
もう片方の手が、俺の動きを阻むかのように袖を握った。

「直井」
「っん、ふうっうっ」

呼んでやればうっすらと目を開けて俺を見るが、恥ずかしいのかすぐに目を瞑ってしまうけれど、じわりとカウパー液が滲んだ。

「……直井」
「ふっ、んぅうっ、うっ」

今こいつを触っているのは俺だという事を認識させたくて声をかける。
とろりと溢れてきた液を指、手のひらに撫で付けて今度は全体を擦り上げてやれば、鼻から抜ける吐息が部屋を満たす。

「直井」
「うっ、あっ、おとなし、さんっ」

名前を呼ばれて思わずゴクリと喉を鳴らして唾の飲み込む。
瞳は閉ざされているけれど、こいつの中には今も俺がいる。
同性相手に何でこんなに興奮しているのかわからない。
しかもこいつに。
純粋に慕ってくれる直井の好意にかこつけてこんな事をしている。

「人の手だと気持ちいいだろ…?」
「んっ、んっ、うっ」

自分の制服の袖を噛みしめている直井がコクコクと頷いて、柔らかな髪がパサパサとシーツの上で跳ねる。
まさかそんな素直な反応が返ってくるとは思っていなかった俺は、自分の下半身にズクンと熱が宿るのを感じる。

「ひんっ、んっ、ふっ、音無さんっ」

そんな可愛い声で呼ばれると犯したくなる。
きっと直井はこの先を考えていない。
ダメだダメだ。
プライドの高い直井が俺にはこんな事まで許してくれてるじゃないか。
ああ……そう思うとなんだかそれが嬉しかった。

制服の袖を掴んでいた直井の手に力が込められる。
もう限界が近いんだろうか。

「イキそうか?」

コクンともう一度頷いた。
促すように扱くスピードを早めると、掴んでいた直井の手が離れてしまう。
けれどすぐにその手が俺の制服の裾を掴んだ。
シワにでもなんでもなっていいから俺にしがみついてろ。

「んっぅ、――んっぅう」

反り返ったそれをグチグチと音を鳴らして扱き上げると、ガクンと直井の膝が揺れてピュッと精液を飛ばした。
勢い良く吹き出した精液は直井の胸まで飛んで、黒い制服を汚す。
揺れる腰を押し付けペニスをきゅっと握って残りも出させると、とろりと垂れて俺の手を濡らした。

口元から外して投げ出された制服の腕の部分は、直井の唾液が染み付いていて黒が濃くなっていた。
はっはっと短くを息をしている直井は目を閉じたままで、何を思っているんだろう?
唇も少し噛んだのか?ほんのりと色づいてふっくらして見えた。

「直井……」

涙を湛えた瞳を向けられる。
疲れていても俺が呼べばこっちを見るこいつが可愛くてしょうがない。

「ん……」

ゆっくりと近づいて短いキスをした。
顔を離すとまた目が開かれる。

「音無さん……」
「ん?」
「すごく…気持よかったです……」
「…………」

あ、やばい腰にきた。

「直井、ちょっと待ってろ」
「……?」

首を傾げられる。
そんな仕草を男のお前がしても気持ち悪いだけだ!とこいつ以外がやったら言ってやろう。

「な?」
「はい……。」

そろそろ我慢の限界だった俺はトイレに駆け込んだ。



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