「…青峰君?ねぇ、どうしたんですか…っ?」
一向に足を止めようとする気配のない青峰に、黒子は懸命に呼びかけた。
青峰のペースに合わせているものだから、歩いているだけで息があがってしまう。それでも、声をかけずにはいられなかった。
「…ね、帰らないんですか?」
昇降口に向かっているとは思えない青峰に問いかけるも、まったく反応はない。
それどころかその広い背中からは強い怒気が伝わってきて、黒子はどうしたらいいのか分からなくなる。
「…青峰君、怒ってるんですか…っ」
「…当たり前だろうがっ!」
泣きそうな黒子の声に、青峰はそこでようやく足を止めた。
「…っ、あお…っ」
「…お前、昨日あれだけ言われたのに、分かってねぇのかよ…っ!」
黒子の腕を痛いほどの力で掴んだまま、青峰はずっと下にある青白い顔に強い視線を注ぐ。
はじめて向けられた苛立った表情と厳しい言葉に瞳を揺らしている黒子を見て、ぐっと眉を寄せながら歯をくいしばった――むしろ、泣きたいのはこっちの方だ。
「…今日は黄瀬と2人きりだって聞いて、引き返したんだよ……お前さ、オレが戻ってこなかったら、あいつに何されてたか分かってるか?」
「…なに、って…」
「…なぁ、言葉で言って分からないなら、オレはどうすりゃいいんだよ…っ」
叫ぶように言いながら、青峰は黒子の腕を引き――
「…っ!?」
驚きに、目を見開く黒子。
逃げようとする体を許さず、そのまま噛みつくようにしてキスをした。
「…ぁ…っ、や…っ」
いやいやとかぶりを振る頭を押さえつけ、更に深く唇を合わせる。
やがて、突然の暴挙に対するショックと息苦しさからか、黒子の足から力が抜けてしまうと、そのまま脱力した体を抱え上げた。
そして向かったのは、近くの空き教室だった。
「…あお…み…っ」
「…悪ぃなテツ…オレやっぱり、ガマンできそうにねーわ」
自らの上着を床に敷き、その上に黒子を押し倒しながら、青峰はポツリと呟く。
「…テツ、お前は、オレのだろ…?」
「…や、やだ…っ!」
うす水色のシャツの前を強引に開かせると、その衝撃に何個かボタンが弾け飛ぶ。
「…テツ、お前、すっげぇきれーだ…」
現れたのは、雪原のように白い肌。細い首筋も、薄い腹も、そして小さな薄紅色の突起も、とても美味しそうだ。
「…ひゃぁっ!ぁ…っ」
ひとつひとつ確認するように唇を寄せると、黒子の口からは甘い悲鳴がこぼれた。
怯えを含んだそれにどうしようもなく欲望を煽られ、青峰は早々に理性を投げ出した。
「…テツ…っ」
震える体を抱き起こすと、自らの膝の上に乗せ、背後から抱き込む。
少なからず抵抗されたが、青峰にとっては子猫に引っかかれた程度のもの。気にせずベルトを緩めると、そのままズボンの中へ手を差し入れ、見つけたそれを握りこんだ。
「…ひっ!?…や、やだ…やぁ…っ!」
乱れた下衣から覗く黒子のそれは、確かに男の象徴ではあったけれど、自分のものと比べるまでもなく幼げで、嫌悪を抱くどころか青峰の欲望は更に育っていく。
「…大人しくしてろよテツ、こわいことなんて、絶対しねーから」
青峰は、黒子の片足からズボンを完全に引き抜くと、小さな耳に軽く歯を立ながら、手の中のそれに指を這わせた。
「…ぁ!ぁんっ、や、あぁ…っ」
「テツ…っ」
与えられた快楽に硬さを持っていくそれが愛おしくて、青峰は夢中になって愛撫を施す。
「…あっ、ぁ、ダメ…っ、も、離して…っ!」
見るからに性に未熟な黒子だ。はじめて他人から与えられた快感に耐えることができず、すぐに限界を訴えてくる。
「…いいぜテツ、イけよ…っ」
「…ひぁ…っ、ぁ、ぁ、ぁっ、やあぁ…っ!」
痛いほどの強さで性感を刺激され、黒子はあっけなく精を放った。
のけ反った白い喉も、震える細い腰も、甘い悲鳴も、喰らってしまいたくなるほど可愛い。自らが与えた快楽に堕ちた黒子という存在が、たまらく愛おしかった。
「…テツ…」
青峰は掠れた声で黒子の名を呼びながら、再びその体を床に横たえた。
完全に力の抜けてしまっている足を開かせ、奥まった場所に濡れた指を這わせながら、再び口づけようと黒子に顔を近づける。
「……テツ…?」
しかしそこで、青峰はハっと動きを止めた。
――すでに抵抗する気力もないのか、目を閉じたまま、黒子は静かに泣いていた。
「……ぅ…っ」
噛みしめた薄紅色の唇から漏れる、小さな嗚咽。ギュッと瞑られた瞼からは、後から後から、大粒の涙があふれ出してくる。
その痛ましい泣き顔に、青峰の頭もようやく冷えた。
「…ごめ…オレ…っ」
慌てて黒子に覆いかぶさっていた体勢から身を起こし、思わず頭を抱えた。
「…テツ、オレ…っ」
とにかく謝らなくてはと、再び黒子に腕を伸ばし、起き上がらせてやったところで――
パシ…!
乾いた音が、2人きりの教室に、妙に大きく響いた。
「…あおみねくんの、バカ…っ!」
「…テツ…っ」
青峰の頬を平手で打った黒子は、強気な行動とは裏腹に、未だ涙を流し続けている。
そんな黒子に、青峰はただ茫然と目を見開くことしかできない。まさに、茫然自失といったところか。
その間に、黒子はズボンをはき直し、おざなりにシャツと上着を整えると、教室を飛び出して行ってしまった。
「……って、おい、テツ!待てって…っ!」
今、あいつをひとりにするのは危ない。
青峰が我に返った頃にはもう遅い。さすがの彼も、今からすぐに追いつくことは、不可能だ。
「…くそっ」
数分前の自分を呪いながら、青峰は黒子の後を追って駆け出した。




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