タイトル
名前 ※必須
メール
ホームページURL
本文 ※必須
バスケの楽しさも、 あの光のことも、 何も知らなければ、 この胸の痛みも覚えることはなかったのだろうか ◇◆◇◆◇◆ 目を開けるとそこは、夜の帝光中体育館だった。 はて、と首を傾げる。自分は今、高校3年生で、バスケをしているにしてもここではなく誠凛の体育館でしているはずだった。 ボールを持つ自分の手を見て、もう一度首を傾げる。いつもより小さく見えて、備え付けの鏡の前まで走っていった。そこで見つめ返してきたのは、少しばかり幼い自分で。 「……せっかく少し筋肉がついたのに、残念です」 これは所謂、逆行というやつだろうか。だとすると、今自分は何年生なのだろう。もう彼には、あの光には出会った頃だろうか。 鞄の中身でも確かめようと踵を返したその時、ガラリ、と背後で重たい扉が開く音がした。 「…誰もいねぇ…」 あぁ、この声は。そっと振り向くと、びくびくしながら中に入ってくる彼の姿があった。まだバスケを好きな頃の幼い顔つきの彼は、やはりこちらには気づいてないようだ。 このまま、とふと考える。このまま自分が声を掛けなかったら、自分と彼との繋がりはなくなるのだろうか。 あの置いていかれる寂しさも、好きなものを嫌いになってしまう辛さも、もう感じなくて済むのだろうか。 彼はやはり、この後才能の開花によってグレてしまうのだろうが、自分は――― 「―――」 ふいに、名を呼ばれた気がして顔をあげた。目の前には相変わらず幽霊を疑って挙動不審な彼しかいないが、耳に届いたあの低い声は、確かに彼のものだった。忘れていた感情が、一気に甦る。 「っ――青峰くんっ」 驚いた彼の瞳に、自分が映る。その瞬間、世界が光に包まれて、そこで黒子の意識は途切れた。 ◇◆◇◆◇◆ 「―ツ――、テツ」 ゆっくり瞼を上げると、自分を覗き込む青峰がいた。窓からの光を背に受け、その表情はよく見えないが、きらきらと縁取られた輪郭に見とれていると、くすりと笑う気配がする。 「いつまで寝てんだよ、ほら、ストバス行くぞ」 「……どうして君がここにいるんですか…」 「おばさんが、まだ寝てるだろうからっつって上げてくれたんだよ」 さっさと起きて着替えろよ、と言って部屋から出ていこうとする青峰の服を咄嗟に引っ張った。突然のことで驚いたのだろう、バランスを崩したままベッドに片手をついて転けることだけは防いだ彼が、なんだよ、とこちらを睨み付ける。 「…青峰くん、キスしてください」 「……あ?」 ほら早く、と促すと、戸惑いながらも唇を寄せてくれる。それに自分から重ねると、彼は一瞬固まった後、唇をつけたまま小さく笑った。 「なに、テツ、今日はストバス行く気ねーの?」 喰っちまうぞ、と獰猛に笑った彼には、中学の頃の面影はなく、それでも、 「やっぱり、君に逢えてよかったです」 きょとりと目を瞬かせるあどけなさに、くすりと微笑んで、黒子はもう一度キスをねだった。 Don't let the sun go down on me. (僕の瞳に小さな太陽)
編集パス ※必須
ファイル
著作権、肖像権、その他の法律に違反する画像、アダルト画像等のアップロードは禁止です。
発見された場合には刑事告訴、著作権者による賠償金請求の可能性もありますので注意して下さい。
※アップした人の情報は全て記録されています。
編集
記事削除
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -