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「くぅーん…」


「甘えん坊さんだ」


よしよしと撫でれば気持ちいいのか、わふわふ聞こえた


――コンコン


「唯賀様、そろそろ寝るお時間です」


壁から聞こえる声に返事もしないで、寝る準備を始める


はじっこにある水道をひねって水を出して歯を磨く


歯みがき粉は水道の右


洗顔は左


シャンプーは水道の前


手慣れたように歯を磨いて、重なった布団を一つ出した


「わんさん寝よう?」


「わん」


二人で一つのお布団


あったかくてすぐ寝れるから


少しだけ聞こえる今日の音


それが少ない気がする


みんなもう寝ちゃったのかな



僕も寝なきゃ



うとうととし始めたとき


「お止め下さい!! ここに来ても何もありませんよ!」


「うるせーよ。何もなければすぐ出ていくさ」


…悪い人?


「わんさん。起きて」


ぽんぽんと軽く叩けばもう起き上がっていたのか、ぐるるといつもと違う声がした


ここには来ないと思うけど、怖い


「わ、んさん…怖い…よ」


こんなこと一度もなかった


コンコンと壁を叩かれる音がして耳を塞ぐ


怖い…っ、誰なの…?



「わん、わんわん!! わん!」


「…わんさん?」


どうしてそんなに鳴いてるの?


僕と同じで、怖い…の?


鳴きやまないわんさんをぎゅってしたら、ギィとどこからか音がした


瞬間一つの光を当てられて目をつぶる


…眩しい、よっ



「やっと…見つけた」


さっきの、人…?


「っ、や…こ、ないでっ!」


怖い怖い…怖いっ


「わんわん!! わん!」


こつこつと近付いてくる


「怖がらないで。俺たちは助けにきたんだ」


…たす、け?


「わん!」


「っ、」


がぶり、とわんさんがかみついた


それでも僕に反対の手を差し出してくる


「大丈夫。一緒にここから出よう? 君は、幸せになるべきだ」



「…し、あわせ」


十分幸せだよ


それ以上の幸せがあるってこと、なの?


でも…ここから出たら僕生きていけない



「少し強引になってしまうが、許してくれ」


「…? っ、ぅあ…」


突然口を抑えられて


びっくりして息を吸ったら急に眠く…なってきた


ごめんなさい、わんさん…


ごめんなさい、お父さんお母さん



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