「雅和、少し話がある」
ドアの前でいきなり父さんから声がかかってきて中に入るように言ったら真面目な、少し怖い仕事のときのような顔をしていた
「…何か、あったのか?」
俺も眉をひそめて聞けばああ、と向かいに座る
「唯賀家からな、一人息子が幽閉されてるという情報を手に入れた」
「っ!? 幽閉って…」
閉じ込めてる…ってことだよな、なんで
「唯賀家のしきたりかと最初は思ったんだ。だが昨日別件で部下がさりげなく聞いたら一言『今引き継がせる息子などおりません』とはっきり言っていたそうだ」
「それは隠すためで言ったんじゃなくて?」
それこそしきたりだから成人まで隠さなきゃいけないとか
唯賀家のことは深くまでは知らないからそこまでは予想だけだけど
「…そこまでは俺もわからん。だから今日も用事がある部下にもう一度聞くよう伝えてある。また帰り次第何かしら情報は来るだろう」
「わかった。それで、どうしてそれを俺に」
そう聞くと父さんは目をつぶった
「その子を俺の養子にしたいんだ」
…え
「なんでまた急に」
養子ってどうして…?
「まだわからんのか。幽閉されて、息子はいませんと言われてるんだぞ。存在さえ消してる息子をこっちで引き取ろうって話だ」
存在…さえ消されてる、だと
「年齢も、名前も、どんな子なのかもわからない。だがどんな子であれ幽閉されていい人なんていない。引っ張り出してここで暮らすようにするんだ、俺たちで」
信頼が厚いと言われてる理由がわかった気がした
部下の人にいつも言われてたんだ
二希さん、本当尊敬するんだって
そんな息子の俺を羨ましいって
それを言われる度にどうしてだと思っていたんだ
そんなこと今まで一度も言われたことなかったし、いつも仕事で姿しか見ることがないなんてしょっちゅうだった
…だからこそ今の父さんの言葉ですべてわかった
「俺…何か力になれるか?」
「いや。今のところはない、だがその子を連れてきたときにお前に託そうと思う。いろいろ教えてやってくれ」
ふ、と笑って俺の頭を撫でる
恥ずかしくて思わず手をはたいた
「やめろ、もうそんな年じゃない」
「いいじゃないか。たまにはこうしてやるのも」
…もう高校生だぞ、一応
「ま、そういうことだ。今日話聞いて明日策を練って明後日…だな」
頼むぞ、と言われて父さんは部屋を出て行った
幽閉…か
独りなんだよな
「…俺に出来ること」
その子の世話、か
俺に出来るか不安だけど
「あと二日」
楽しみだって思う
それと同時にきっとうまくいかないことが続いていくんだろうなとも考えていた