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目を開けてるのかすらわからなくなるほどの暗さ


僕は今そこに住んでます


独りでいつからかはわからないけど、ずっといる気がする


当たり前になっていった暗さが落ち着く


「くー…」


「あ…わんさん。こんにちは」


指にふさふさな感触がして挨拶したらすんと音がして


わんさんはいつの間にかずっと一緒にいる


いつからかはわからない


生まれたときからなのか、それとももっと前からここにいたのか


「今日はなにしよっか。おいかける? かくれんぼがいい?」


僕とそのわんさんが遊ぶことはその二つ


おいかけるのは文字通り走って逃げたりおいかけたりすること


かくれんぼは僕が遠くに行って隠れること


「わん、わん!」


「かくれんぼだね。よし、今日は僕がわんさん捕まえるから」


わん、ともう一回言って遠くに走って行くのがわかる


目をつぶって少しだけ集中する


しんとしているけど、少しだけ聞こえるいろんな音


「…あそこかな」


小走りで向かってある一角へ


手を伸ばすと、さっきと同じくふさふさな感覚



「見つけた。わんさん」


「うー…わん」


降参と言ったみたいな声に笑ったらぺろりと顔をなめられた


「もーわんさんくすぐったいよっ」


でも嫌じゃない


嬉しいんだ、独りじゃないから


こうやって遊ぶのも


だから何も寂しいことはない


これからも


――あなた様はここでしか生きられないのです


悲しそうに言うあの人は今どこにいるのかな


僕をここに置いた黒い服を着た人


もうあまり覚えてないけど


外に出たら僕は生きていけないんだってことを教えてくれた人


「わんさん。僕ここで生きて…死んでいくんだよね」


大人しくなったわんさんを撫でながら


「くぅー…ん」


「悲しくないよ? わんさんがいるんだもん。今ここにいるのが僕の幸せだから」


その幸せが崩れるまであと二日




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