部下の人に車を出してもらって助席の窓から必死に探していた
手がかりも何もない、ただあの子だったら行きそうだというところを探していた
けど見つからない
どこに行ったんだろう
どうしていなくなったんだろうか
――キキ、
「っ、どうした」
「いえ…犬が」
犬、と聞いて前を向けば
「わん!」
まさかあの子の
「降りて追いかけます、きっと犬についていけば見つかると思いますので」
急いで降りて犬の後を追いかける
俺の真横を走る犬も疲れているのか息が荒い
「わんわん!」
たどり着いたのは一つの小さな公園
そこにある赤い、ドーム状の遊具に滑り込んだ
穴が小さくて入れそうにない俺は穴を覗き込んで目を見開いた
ぐったりとうつ伏せになっているその子を見つけた
「きゅん、くーん…」
その子の顔を舐めて起こそうとしてる犬
けど、起きる様子はない
俺は膝を折って遊具の中に顔を入れた
「…心配、させやがって」
動かないその子を抱えれば、心配そうに見上げてくる
「大丈夫。熱あるけどゆっくり休ませれば治るから」
片手で犬を撫でればわん、とまるで返事をするように鳴いた
+++
家に帰った後が大変だった
ぐったりしたあの子を寝かせて、医者を呼んで犬も疲れたのかずっと眠っていた
医療器具をたくさんつけられて今もなお眠り続けてる
父さんはよくやった、と褒めてくれた
けどよく見る厳しい顔で
「これからはよく考えて発言するんだ」
と言われて、部下の人に不快な思いをさせたんだと痛感した
ピ、ピ、ピと無機質な音が響く部屋
俺はその子の頭を撫でて
「早く、起きてくれ」
と小さくつぶやいていた