「…出て行って何時間くらい経ってる」
「もう二時間は経ってるだろうな」
一人と一匹がいなくなった
何も言わず、何も書かずに
「朝は何も変わらなかったのに」
サングラスを渡して嬉しそうにしていた
少しでもこっちの警戒心がなくなればとあげたささいな物だけど
「まだあの子は何も俺たちには言っていない。それが現実だ」
厳しい父さんの言葉
わかってる
名前も、どんな生活をしていたのか
その子の口からは何も聞いていない
勝手にこっちが想像をして手を打ってるに過ぎない
「俺も探すっ」
「探すってどこをだ」
「っ…でも探さないと、あの子は今は犬がいるからいいかもしれない。けどもう老犬だ、いつ死んでもおかしくないくらいの。だからいなくなっても独りじゃないと俺たちがそうしていかないと…」
あの子は壊れてしまうんじゃないか
俺の、自己解釈
あの子は本当は強いのかもしれない
でも何も話してくれないから
わからないから
わかるようになるまで追いかける
「車を貸してください。父さん」
「………」
必ず、見つけてくる
そして今度こそちゃんと話すようにしないと
誰かが踏み込まないと関係は進まない
「いいだろう。部下を連れて一緒に捜索に当たれ。俺は連絡を待つ」
「ありがとうございます」
これで探せる
今、迎えに行くからな
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