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暗い

だけど道と人の顔が見える


すごいメガネだ


「わんさん! これすごい!!」


「わんわん!」


ぎゅってしたらふわふわなわんさんの毛でくしゅんってくしゃみしちゃった


「入るぞ」


「っ、ど、うぞ」


低い声


まだ、少し怖い声


「随分楽しそうだったが何かあったのか?」


ふ、と優しく笑いながら聞いてくる


「ああ、グラサンか! それ気に入ったんだな。良かった良かった」


ぽんぽんとされたら、ほんわかした


身体の中変なのかな…



「まだ俺とはお話出来ないか?」


「…お話…」



なんのお話?


どんなお話?



わからない、よ



「そんな悲しい顔しないでくれ。邪魔して悪かったな」


ぱたりと出て行った音



あのおじさんとお兄さんは僕に何を期待してるんだろう



何も出来ないのに



「くぅーん」



「ごめんねわんさん。僕も…どうすればいいのか、わからなくて」



ここにいる意味もないのに



「…ねぇわんさん」



ここから出ていったら帰れるかな



「おじさんもいないから家に、帰ろう?」



「わん!」



独りじゃないから出来る気がした



「…じゃあ、行こっか」



もうどこにあるかもわからない家だけど



きっとたどり着ける



わんさんを先に行かせて僕はその後をついて歩いていく



「わんわん」


「あ? ちびの犬か。なんだ腹減ったのか?」



こうやって人が来たら僕は隠れて


わんさんは逃げるように走っていく



見かけた人たちはまあいいかと自分の部屋に戻っていく



そうやってようやくおじさんの家を出ることができた



「…っ、これが…外」


いろんな音がして頭が痛い


どこからかの人の声と


わんさんより怒ってるような犬の声


他にもわからないけど音がして



「くーん?」


「だ、いじょうぶだよ。道案内お願いね?」


ズキズキするけどきっとすぐ良くなっていくはず


上を見上げればおいしそうなふわふわした白いものが上にある



「これは、お天気…だったかな」


わんと呼びかけるようなわんさんの声に僕たちは歩き出した




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