1 雅和side


犬の隣で眠ってしまったその子に毛布をかけて、俺は同じ部屋に布団を敷いて勝手に寝た


本当はその子が嫌がりそうだと思ったんだけど父さんが少し強引にこっちもしないといつまでも進まないって言われたから


「…ぅ、ん…」


目覚ましをかけるのを忘れて慌てて時間を確認したらいつもより十分ほど早くに目が覚めた


良かったとほっとしていたらん、と擦れる音がして


「ん…ま、ぶし…ぃ」


眩しい…?



寝言かと思いながら布団を片付けていると


「…? だ、れ…?」


きょろきょろとしてるその子に頭をぽんぽんとすればびくっと身体が震えた


「ごめん。おはよう、俺昨日一緒にいた二希雅和」


出来れば雅和って呼んでほしい


二希って言ったらみんな振り向くから


「…ま、さかず、まさか…ず」


覚えようとしてくれているのか、何回も俺の名前を繰り返していた


「声…聞きたい」


「声? あ、俺の?」


ちなみにその子の外見は、珍しかった


普通は黒髪が一般だけどその子は灰色っぽかった


汚れてるのかと思ってたんだけど地毛らしい


それが未だに腰らへんまで伸びていた


「じゃあそのまま俺の紹介な。今高校生で、学校に通ってる。この屋敷の跡取りってことになってるってのと…」


「…おぼ、えた」


え?


「声、覚えた」


目が見えてないから声で判断しようってことなのか


話していた内容は別に覚えてもらわなくてもいいし、ちょうどよかったのかもしれない



「ぅー…わん」


「あ、わんさん。おはよう」


くるっと後ろを向いてぎゅっと抱きしめてるその子


俺との行動の差が激しすぎてびっくりした


嬉しそうだから、いいのか


――コンコン


「はい」


「二人とも。ご飯だ」


ふとその子を見ればきょとんとした顔のまま固まっていた


犬の方は小さく威嚇してるのがわかる



「ここで食べたいんだ、いいか」


「は、では食事をお持ちします」


ドッグフードも、と声をかけてよいしょと立ち上がる


学校…めんどくさいな


それとサングラスって部屋にあったかなと考えながら部屋を出た




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