6 隆弘side

「雅和、見つけた。犬のいる部屋にそのまま来い」


部屋に二人で行けばいなくなっていて慌てて探しに向かった


唯賀家の分家である以上機密事項はかなりあるため、部外者を見つければ捕らえられる


昔からの屋敷だからどこかで迷ってるんだろうと思って近くしか探していなかった


「……」


でも目をつぶっているが相当な距離を歩いていた


…それも犬のいる部屋に向かって


この子の部屋は右端のさらに隠してる部屋だ


そこから中庭を通って、真っ直ぐ行けば犬の部屋


「中庭までよく通ってきたな」


あと少しの距離を行ってドアを開けた


「父さん、あ…その子が」


雅和が先に着いていたようだ


はっとしたように抱えられてるのに目を向けて



「そうだ。でも自己紹介の前に再会の方がいいだろうな」


着いたぞ、とゆっくり降ろせば目をつぶったままふらふらと歩き出す



「…わ、んさん…?」


ふさ、と触る音が聞こえたからすぐわかっただろう


座ってただ犬を撫でてる姿を見ていた


「寝てるの…? いつも早起き、なのに」


まるでどうしてと言ってるかのような声色に犬に早く起きてほしいと思った


その子を喜ばせてあげられるのも


安心させてあげられるのも


わんさん、だけ


「…ぅー…」


何かが唸ったような音が聞こえた


「わんさん。起きる時間だよ? お寝坊さんだね今日は」


ふふ、と笑いながら撫でてると犬も完全に起きたようだ


立ち上がってまるで安心させるようにその子にすり寄っていた



「くすぐったいよー」


そう言っても離れないその犬と目が合う


だが前見たく吠えないのは


「…怖がらせないためか。随分賢い」


ずっと目が合ったまま


だが主人を安心させる行動をとるその犬


「そんなに警戒しないでほしいんだがな」


手を差し出せばふん、と鼻で鳴いてそっぽを向かれた


「今日はここで失礼するよ。君も今日はここで寝て構わない」


びくりと震えた後ぱたりと犬を撫でていた手を落として


「……はい」


反応してくれただけでも嬉しいが、まるでもう諦めてるといった声に息子を引っ張って一緒に部屋を出た



「んな感じだ。見ててわかっただろ」


「…うん。あの犬、もう長くない…んだな」


いなくなったら俺らしかいない


「そのための、俺らだから。頑張らないと」


優しい顔になってる横顔にふ、と笑ってしまう



「なんで笑うの」


「ま、頑張れ」


にやにやした顔で言えば睨まれたが、まあそんなのどうってこともない




prev next


back




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -