4 隆弘side

「…予想以上、だな」


名前も答えてくれなかった


目をつぶっていたのも気になる


「父さん」


雅和か


「その、どうだった…?」


扉越しに不安そうな声


「そういう話は中に入ってからするもんだぞ。こっちこい」


失礼します、と不安そうにしながら入ってくる息子の頭をぐしゃぐしゃにした


案の定すぐはたかれてしまったがな


「それで?」


よいしょとお互いに座った瞬間に見上げてくる


ぐらぐらと揺れてる目はどうしてなのか俺が聞きたいくらいだ


何を思ってるんだ、と


「男の子だ、名前は多分本人もわかってない。年はそうだな…お前より三つくらい下くらい」


髪が異常に長いのは切る人がいなかった


「あと眩しいのか目をつぶっていた。気配にも敏感だ」


そうなったのは親がいないから


「…あとは」


「もう、いい…わかった」


聞きたくないと首を横に振る


「雅和…?」


どうしたんだ


「大丈夫か、顔色が悪い」


こういう話は苦手だったようで胸元を握ってる手も白くなっていた



「大丈夫…」


想像したら


俺だったらきっと生きていけないと思っていただけ


そう言って小さく笑った


「会ってもいい?」


「いや、今日はやめておいた方がいいだろう。随分怖がっていた」


明日二人で行こう


その子が何を求めるのか


どういった性格でどんな顔で笑ってくれるんだろうか


「大丈夫だ」


そうなった時、雅和も大きくなってるだろう


「むしろ俺はお前がどうしてそんな不安になってるのか逆に聞きたいくらいだがな」


わしゃわしゃと髪を撫でればまた怒って振りほどく


「やめ、…どう接すればいいのか少しわからない、から。でも受け止める自信はある」


どんなことがあっても


いつもの目に戻ったことに安心した


「そうか。ならもう寝な、明日その子の部屋についてこい」


強気な目で頷いて、部屋を出て行った


「あとはあの犬か」


あの子の飼い犬


一緒に眠らせたんだがまだ起きてなく、どこかぐったりしている


「なんとかして会わせてやりてぇな…」


もう老犬なのだ、きっと閉じ込めたあたりから一緒だったんだろう


少しでもお互いに安心させて


少しずつ俺たちに触れて


「とんだ綺麗事、かもな」


現実はそんなに甘くはない




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