3

――お一人じゃ寂しいですから


わぁ…わんさんだ!


――きゃんきゃん!


ぎゅってしたら、あったかくてふわふわしてて


わんさんも僕がぎゅってしても大人しくしてくれてた


――…様も、これで寂しくはないでしょう?


うん! ありがとう…さん!


最初見たときは外は明るくて、わんさんの姿も見れた


うんと小さくて金色の毛並みをしてて、とても綺麗だった



お父さんもお母さんもわからないから、僕は黒い人しか話さなかった


わんさんと一緒にしてくれてありがとう


…もう名前もわからない、黒い人



でもなんで今そんな夢を見てるんだろう…?


――チュンチュン


「…ぅ、ん…?」


初めて聞く音に目を開けたらズキンと目が痛くなった


明るかった、から


眩しかったから


「わんさん? どこにいるの…?」


目をつぶって呼んでも、いつもはすぐ来るのに


「…わ、んさん…?」


来ない



昨日…誰かに外に、出されたんだ


「っ…う…か、えりたい…よ…」


ここは広くて何もわからない


目をつぶってもわかる



「わんさん! どこ…?」


一緒に…帰ろうよ


――コンコン


「お、目が覚めたか」


上から声がして顔を上げる


つぶったままだから相手の顔は見れないけど


「俺は二希隆弘。君の分家だ」


分家…?


「君の名前を教えてくれないか?」


「……」


名前、わかんない


それにその人に教えたくなかった


黙っていれば、その人もきっと僕を捨てるはず


…待って、なんでその人もって思ったの…僕


「名前ないのか、もしかして」


びくっと震えた


「…そうか。まあいい、これからは君もここの家族だ。よろしくな」


近付いてくる気配がしてもっと震えてくる


怖い…何されるんだろう



「そんなに怯えなくても君には何もしないよ」


頭を撫でられた


それでも…怖かった



「何か持ってくるよ。少し待っていてくれ」


ふっと遠ざかっていく


完全にいなくなったのがわかって息を吐いた


「…帰り、たい…」


わんさんに会いたい


どこにいる…の?



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