茜色と空

※♂沖田×♂神楽










教室に差し込む夕日に目を細めて、窓側で爆睡している沖田を神楽は睨み付けた。
「おい、もう夕方アル」
「……」

どうやら見事に爆睡中らしい。諦めて神楽も椅子に座る。
まあよく考えればコイツが起きるのを待っている義理なんてないんだけど。
でも、


「沖田……」

柔らかな風が吹いて、栗色の髪をサラサラと動かす。起こさないようにそっと、その髪に触れた。


…でも、こんな風に素直にこいつを見つめていられる時間なんて滅多にないから。


好きだと言えない相手を好きになった。



それは意地とか見栄とかそんなものじゃなく、もっと根本的なモノ。
その壁を越える、勇気のある奴等もいる。例えそのあとに待ち受けているのがハッピーエンドとは限らなくても。
臆病な俺は伝えることもできなくて、友達かと問われればそれすら曖昧な関係で。
まあ良くて喧嘩友達、だ。

好きだと伝えたら終わってしまう関係ならずっとずっとこのままの関係でいい。そう思うのは神楽だけじゃない筈だ。
大切であればあるほど、壊れるのが怖い。


…そのわりに、


「普段は喧嘩ばっかだけどナ」
苦笑して、茜色に染まる空を見上げた。
普段なら決して言わない二文字を紡ぐ。
その声は、あっさり風にかき消されそうな程細く小さかった。


「……好き」


呟いても状況が変わるなんて都合のいいことは起こらない。分かっている。
分かっているのによく分からない悔しさが沸々と沸き上がってきて、頬を一筋冷たい涙が伝っていった。












言わないお前は臆病だと、人は笑うだろうか。
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