ずっとずっと、一緒です

三つ数えて振り向いての続き





それは神楽が地球を去ってから、2年後のお話。



俺は珍しく休みの取れた休日を満喫すべく、私服に着替え畳に寝転んでいた。惰眠を誰にも邪魔されず貪れる事の大切さを噛み締め、ぼんやりと天井を見つめる。いつも欠かさず通っている公園へは、いつもより本の少し遅い時間に足を運ぼう。



神楽が行ってしまってから早2年、俺はどうしても抜けられない用事がある日以外は、あの公園に行っていた。歌舞伎町に戻ってくるなら確実に会うんだろうが、それでも早く会いたかった。
会わない間に俺が変わった所と言えば、170を脱出した身長と髪型くらいだろうか。
向こうはどうなんだろう。

実は、神楽からはたまに連絡は来てる。手紙で。しかし常に住所不特定で、俺からは送れない。一方通行だ。聞きたいことも何一つ聞けやしない。最初に送られてきた手紙を、内心喜びながら開けたら『お久しぶりです。やっぱり地球のご飯は美味しかったです。カップラーメンでいいから地球のもの食いたいアル』だった。

今どんなもん食ってんだよ。
というより俺に対する質問とか(最悪お元気ですか、でもいい)、自分の現状とか色々あるだろ。
カップラーメン食いたいなら、タバスコ注入した激辛のヤツ送ってやるから住所教えろ。それ食って少しは頭に刺激送りやがれクソチャイナ。
手紙に疎い男子並みの文章じゃねぇか。これじゃ俺が彼氏の素っ気ない文面にぷりぷり怒る彼女側だ。そんなの御免被る。しかし毎回こんな文面だからやきもきしてるのも事実である。



「そんなヤツからの手紙を、律儀に全部保管してる俺って、中々に健気でさァ」

俺のタンスの右下の箱には、定期的に入ってくる神楽の手紙が入っている。一番短かった文面は『よせやい。照れるじゃねぇか』だった。一体宇宙で何やってんだろうなあいつ。



つい、と天井から視線を外し空を見上げると、もう見慣れてしまった宇宙船が空を泳いでいる所だった。
あれに神楽がのっていたら。そんな期待を何度抱いただろう。たった2年が、ここまでゆっくり過ぎるものだとは知らなかった。

そういや最近、たまに読めない文字が混じってきた。そろそろ帰ってこないと、俺はアイツと意志疎通すらできない気がする。


そんなことをつらつら考えていたら、いつのまにか俺は睡魔に身を委ねていた。

***


どれくらい眠っただろう。瞼を開くと、空はもう茜色に染まっていた。


「……?」


なんだかやたら騒がしい。

隊長が起きた、だのうるさいバレちまうだろうが、だの、お前押すな、お前こそ押すな、もうてめぇらどっかいけ彼女が迷惑だろうが、だの。…うん、彼女?


「起きたアルか?」


不意に、背中側から聞こえる懐かしい声。
一瞬息が出来なくなった。

「あれ、まだ寝てるアルか?ったく、せっかく約束守って真っ先にお前のとこ、」

普段の俺ならあり得ないスピードで振り返った。
あまりの速さに神楽もびっくり――…、


「…どちらさまですか?」
「オイ2年越しの第一声がそれかヨ」


座っているとはいえ、伸びたと分かる身長、腰まで伸びてツインテールにしてある髪、昔はなかった柔らかな膨らみ…。つまり胸。
俺のショボい変化なんて比じゃない。というよりもうこれは変化じゃなくて進化だ。ピチュウがピカチュウになりました、みたいな。

「お前人をジロジロ見るなヨ、胸くそ悪い」
「胸くそ悪いって、久々に会った反応がそれかィ」
「お前なんか私だって分からなかったアル」
「そりゃそんな劇的な変化で分かるわけ…」
「それでも分かれヨ、彼氏ダロ」
「いや、そうだけ…ん?」

彼氏?
いやいや、聞き間違えだろ。
いやいやいやいや、聞き間違えじゃないきっと違う。

周りの声が更に騒がしくなって、俺は立ち上がった。

「外に…あの公園に行きやしょう、チャイナ」

手を伸ばすと、少し躊躇う気配。しかしややあって、そっと重ねてきた。
昔ならあり得ない展開に思わず思考が休止する。

「おい、サド?」


言われてようやく、俺は神楽の手を引いて立たせ、そのまま然り気無く繋いで屯所を後にした。
勿論、ついてきたら明日には男のシンボルが無いと思えと覗いていた隊士達に脅しをかけて。




「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -