どっちが


……気になる。というより、気にされてる?




じぃぃいー。そんな効果音が似合いそうな見事な視線が俺を突き刺している。もしそれが土方辺りならムカついてバズーカをぶちかますが好きな奴だとそうもいかない。しかし気になる。どうしろって言うんでさァ。


戦い終えた公園のベンチで、俺は気がついたら眠っていた。隣にまだ神楽はいるのか目を開け確認しようとして開けられなくなった。
開けなくたって分かるくらいの強い視線。もしかすると視線ではなく殺ろうという殺気なのかもしれない。

俺はやや思いきって口を開いた。

「見つめすぎ。気になるからやめろィ」
目を開いて、神楽を見つめ返すと、神楽は目を見開いて後ずさる。
「なっ、なななっ、起きてるなら言うヨロシ!」
「いや、テメェがやたら睨んでっから悪ィんだろ」
「……ムカつく顔してるから、殺ろうか打算してたアル」

やっぱりか。心臓がギシリと軋む。分かっていても慣れないもんだな。
開いた俺の瞳は、隣の夕日色の頭に負けないくらい見事なオレンジの空を写した。
「…………なあ」
あまり女らしいとは言えない呼び掛け。女らしいコイツなんか気持ち悪いだけだけど。
その後じっくり間をとって、神楽は口を開いた。


「見つめてた訳、教えてやろうか」
「え、俺を殺ろうってんじゃ…」
この、鈍感。彼女は確かにそう言ったように思えた。その答えは結局夕日に溶けてしまったが。
「え、どう言う……っ、」
ふわりと、というにはやや乱暴な、そしていきなりな口づけに俺は目を見開いた。青く透明そうな瞳が近い。近すぎてぼやけ、空を見ているような気分にさせられた。


やがてゆっくりと離れ、放心している俺に神楽はむくれた表情でベンチから遠ざかった。
その顔は、夕日より赤く紅葉のようだ。まだ夏なのに。


「じゃーな。沖田。また!」
公園の入り口で振り返った神楽は、にっと勝ち誇った顔で笑って去っていった。あの感じだと多分、色々こっちの気持ちも勘づかれていそうだ。そのうえであの行動なら……。






しまった。これじゃあ俺はただのヘタレじゃねぇですかィ!




……とりあえず明日、せめて想いくらいは俺から。



夕日は俺を慰めるように、耳まで赤いであろう俺の表情を隠すように赤みを増して沈んでいった。








へたれ沖田。
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -