「それにしても」
しばらく抱きしめたあと、ゆっくり神楽を離すと神楽が赤い顔をしたまま沖田を見た。青い瞳は少し潤んでいる。
「お前が斬られるなんて、そんなに手練れだったアルか?」
「あーいや、戦ってる最中に別の事考えたら撃たれた」
「撃たれたアルか。戦ってる最中に、何の事考えてたネ。…女とか言ったら殺すアルヨ」
「…女っちゃあ、女」
わざとそんな風に濁すと、明らかに動揺した気配が隣から漂ってきて苦笑した。

「神楽。アンタの事についてでさァ」
「私?」


***


「次会ったらどうやってお前を苛めてやろうかと考えてたんでィ」
沖田はニヤリと笑って神楽の頭に手をのせた。それが嘘だと分かるくらいに、神楽はいつのまにか沖田が分かるようになっている。


「殴って欲しいならその足殴ってやるアルヨ。それとも今度こそアンハッピーターンくれてやろうか?」

「…それよか、その溶けかけたかき氷のが気になるなァ」


「えっ。…ああっ!」
すっかり食べ物の存在を忘れてしまっていた。神楽にとってはあり得ない暴挙だ。
イチゴ味のかき氷は、少し残っていたがほとんど溶けてしまっている。
「貸しなせェ」
落ち込む神楽の手から、沖田はヒョイッとかき氷を取った。
ストローでできたスプーンにかき氷をのせ、目の前に差し出してくる。


「ん」


催促するようにストローを持ち上げられて、神楽はかき氷を少し躊躇った後口に入れた。


恥ずかしげもなくいとも簡単にあーん(ではないかも知れないが)をされて、心臓がうるさい。ん、じゃねーよコノヤロー。
「イチゴより赤けェな、顔」
「なっ!それはお前なそんな恥ずかしい事を平気でやるからっ」
ニヤッと笑わない沖田の笑い顔は心臓に悪い。そんな嬉しそうに笑わないで下さい頼むから。


「たまにはアリかもって思うよなァ。こんな夏祭りも」
氷のなくなってしまったかき氷を横に置いて、沖田は上を見上げた。
「お前が言うなヨ」
「まぁな」
全く、わかっているんだろうか。こっちがどれだけ怒っていて、どれだけ不安にさせられたか。
それは今日一日に限った事ではないのだ。


「神楽」
不意に伸ばされた手に首を傾げると、手を掴まれた。大きいと分かっているはずなのに、包まれるように握られるとドキドキする。その熱を指先から悟られそうで緊張した。
「な、なにアル…か?」
「んな緊張するなィ」


クスッと笑われて体温が急上昇する。ただでさえ最近は暑いというのにさらに暑くなってしまったではないか。
「はぐれないように、な」
「はぐれるも何も…」
屯所内は人気がなくガランとしている。今年もお偉いさんの警護なのだろう。
そもそも縁側に座っているだけだ。
つまり、はぐれたりしない。

「気にすんな。…俺が、言いたかったんでさァ」
その言葉に照れが入っている事に気づいて顔を沖田に向けると、沖田はムッとした顔でそっぽを向いた。
しかし耳はさすがに隠しきれず、赤くなっているのを見逃さなかった。


「…そーゆーことなら、仕方ないアルな。はぐれたら困るし」





…はぐれないように、手を繋いで傍にいれたらいいなんて、本当柄じゃない。
けれど。
来年もここでいいかも知れないなんて考えてしまうんだからしょうがない。



いつもの喧嘩も言い争いも、花火に見とれてきっと休憩している。だから。
たまにはこの掴まれた左手の心地よさと恥ずかしさに、身を委ねてもいいアルな。と神楽は静かに瞳を閉じた。











天宮晋夜さまに捧げます!
はぐれたら大変だからと沖田が手を繋ぎ(ちょっと赤くなりつつ)、それに神楽が顔を真っ赤にする。


というなんとも聞いただけで萌えるようなシチュに私は……!
ううっ、すいません。精進します。


天宮様だけお持ち帰りokです。
苦情、書き直し受け付けます!
改めまして、相互ありがとうございました!!
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