本日、7月7日。

ベタにべたべただと笑われるかも知れないが、俺は自分の誕生日を忘れていた。と、いうより確か7月1日くらいに一回、そろそろ年食うな、と思った気がする。
しかしそれから、チャイナ絡みで色々な事があって忘れてしまっていた。



今日は、気がつけば俺はチャイナにキスをしてしまっていた。しかも自惚れ発言とともに。
俺に惚れてるからでさァって、ナルシストか貴様!と唸りたくなる。

しかしあの発言は、自惚れたって仕方なくね?
ゆっくりと名残惜しくありながら、腕をほどくと神楽は顔を真っ赤にして、公園を走り去っていった。
その反応は、なあ、どっちなんですかィ?

そして、7月8日。


布団に入り、ようやく意識が遠退き始めた頃、山崎の緊迫した声で起こされた。
「隊長!食堂に攘夷浪士が潜伏していました!直ちに食堂へ!」
「わかった」
すっかり慣れた制服を着直し足音を潜めて食堂へ向かう。
そして――開いた。


「ご用改めであ…」
言い切る前にパンパンパン!という音とともに、電気がついてキラキラした紙切れが頭に降ってきた。
非常に悔しいがこの時、俺は豆鉄砲食らった顔をしていたことだろう。
目の前には食べ物、食べ物食べ物。…ちょっと多くねぇ?

回りには隊士、そして近藤さんに土方。旦那や新八くんまでいる。
オイ、その流れだといるはずのチャイナは何処?

「総悟」
近藤さんの一言の後、皆の声が重なった。



「誕生日、おめでとう!」

わあああ、と拍手が鳴り響く。
早速旦那は食べ物に食らいついている。


「ありがとうございます近藤さん。と、その他」
「その他!?」


にっこりと笑うと、近藤さん意外の総勢からツッコミを食らった。


照れ隠しなんかではない。決して。



そして更なるサプライズ。
「総悟」
食堂の影から、聞き間違えでなければ唇を奪った少女の声。下の名前で呼ばれる破壊力を今思い知った。

ひょこっ、と現れたのはやはり神楽。
心臓が一気に動きを活発化させる。

神楽は目の前でうつ向いて、ピンクの箱をつきだした。そしてむすっと、不機嫌気味に。
「誕生日、おめでとうアル」

「…チャイナ、俺の誕生日…」

っていうか、俺昨日アンタに許可なくキスしたんだけど。そっちは触れないのか?
「勘違いすんなヨ。これは私からじゃないアル。皆のプレゼントネ。じ、じゃんけんっ負けて…その、………とにかく早く受けとるヨロシ!」
「ありがと」

その場はもう勝手に宴会を初めていた。
うるさい食堂の音が耳に届かないほど、神楽に全神経を集める。


袋をあけると、見覚えのあるアイマスク。
だいぶ色褪せてきていたから、買い換えようと思っていたものだ。
「ジミー発案らしい…え!?」

神楽の言葉を遮るように、神楽の手を握って食堂を抜け出した。
暖かい目で見られている事に気づきながら。




七夕は昨日だったが、晴天の今日もまだ星が輝いていた。
縁側に二人腰かける。
俺は単刀直入にきりだした。


「俺はチャイナが好きだ」
しっかりとその目を捕らえる。もう、逸らしたりしない。
神楽は何故だか少しぽかんとした表情を見せたあと、慌てて目を逸らした。
「ずるいアル。その目」
「目?」
「必死って、目。してるアル」
「必死にもならァ」
ふっと空を見上げると、星が一つ流れ落ちた。
「流れ星!」
神楽の驚いた声に耳を傾ける。……この声好きだなァ。
「チャイナが俺に惚れますようにチャイナが俺に惚れますようにチャイナが俺に惚れますように」
流れてしまった後だけれど、少しくらいは効力があるかもしれない。


「馬鹿なこと頼むなヨ。警察なら世界平和でも願うヨロシ」
真っ赤になった神楽は、少しの間押し黙り、意を決したように呟いた。
「それにそんな願いかけたって無駄アル。……とっくに叶ってるネ」
「チャイナ…」


この世にいないと疑ってなかった神様の存在を、今日だけは信じてみてもいい気がした。



暗闇の中抱き締めて、チャイナにそっと口付ける。
それは柔らかくて、とても淡かった。







本日7月8日。
誕生日まであと0日。

↓オマケ









***
オマケ。

食堂に戻った神楽は幸せそうに腹一杯食べ物を詰め込んだ。
だがやはり夜中。1時をすぎる頃には既に、神楽は寝ぼけていた。
椅子に座って目をこすっている。
「神楽からプレゼントは?」
「あ、…あるヨ。」
「え?あんの?」
絶対ないと思っていたのに。
神楽は寝ぼけてるからこその、破壊力抜群の笑顔を見せた。今の笑顔ならラスボスだって即死だろう。


「はい、…わた……し」


かくん、とそのまま神楽は俺の肩に体重を乗せて寝てしまった。いや、それは嬉しいが今、耳がおかしくなったぞついに。
誕生日に私?私って。



え、いいの。食っていいの?これからがほんとのサプライズ?



するりと神楽のポケットから落ちた‘綿菓子’に、俺は気がつく事はなかった。
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