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「で、用件ってなにアルか?」
特に行き場もないらしい。適当な道を進んでいく沖田に、神楽は切り出した。
「昨日、アンタのとこに近藤さんと土方さんが来たって…」
ギクッと背筋が氷った。
「何の用だった?」
「べ、別に。…あ、姉御を呼べって。それで姉御に殴り飛ばされて…」
「筋としちゃあ間違ってねェが、昨日近藤さんはねぇさんに会ってねーって言ってるし、殴られた傷もねェ」
「トップシークレットアル」
いつの間にか、少し狭い路地へと来ていた。
焦るあまり足下を見逃して、ゴミに引っ掛かった。
「うおっ!」
ドッターン!と派手な音とともに前へ倒れた。
「はは、嘘なんかつくからでィざまあ見ろ」
にやにやと笑う沖田はやっぱりどこまでも嫌いなドS野郎だ。
「ほら、いつまでしゃがんでんでィ」
後ろから、沖田が起こそうと脇を掴んだ。あ、ヤバいくすぐったい。
「…っ、ひゃ!」
あまりのくすぐったさに声をあげると、すぐに手が退いた。ずざざざざっと異様に遠退く音。なんだ?
「…ばっ、くすぐってェなら先に申告しやがれバカ!」
「な、お前が勝手に掴んだアル!」
少し薄暗くて見えないが、沖田が動揺しているのは分かる。
「何をそんなに驚いて…」
「アンタが理由を言わないならもう用事はない。じゃーな」
くるっと踵を返して沖田は高速度の徒歩(と、いうよりは競歩)で去っていった。
なんなんだ、それなら別に万事屋で良かったじゃないか。
よく分からないヤツの行動と同じくらい、掴まれた時の変な、浮わついた感覚の訳がわからなかった。
とりあえず、帰ろう。
本日7月3日。
誕生日まであと5日。