夢だと分かる夢だった。


小さな私が目を覚まし、寝ぼけ眼で隣を見ると自分の背丈より少し大きい何か、袋に入っていて分からない何かが置いてあった。
私はすぐに飛び起きて、その袋を軽々持ち上げリビングへと走った。


「パピー!なんか置いてあったアル!開けていいアルか?」
「おーよかったな神楽ちゃん。何が入ってたんだ?」
小さな手で必死に袋をビリビリと剥がすと、出てきたのは紫の番傘だった。

「うわあ…!きれいアルゥ!マミー!」
「良かったわね」
にっこりと笑うマミー。
大分薄れた記憶のなかで、今日の夢は大分鮮明で、だからこそ苦しくなった。
「良かったね、神楽」
「うん、お兄ちゃんと色違いでおそろいー」
ふにゃっと笑う、無邪気な私。
まだ、この時はあんなバカ兄貴じゃなかった。もっと家族も一緒で、にこにこしてて…。


「なんで私、かさもらえるアルか?」
パピーが頭を優しく撫でる。


私はそこで、意識が遠退いた。
パピーの声も遠退いた。





「誕生日だからだよ」




***




「…………ら、」
「…う゛ぁっ、」
「…神楽っ!!」
「!?」
驚いて目を開くと、少し慌てたような銀時の顔があった。
「ここは…万事屋アルか」
「他にどこがあんだよ。ったく、いきなり呻くからびっくりしたろーが。お陰で眠れなかったぜ。大丈夫か」
「なんか夢みてたアル。ごめんね銀ちゃん」
「ホントに大丈夫なんだな」
「うん」
こくっと頷くと、銀時はふわぁっと背伸びをし、また寝室へと戻っていく。
「銀ちゃん、ありがとう」
「……ああ」
「ねー銀ちゃん、給料欲しいアル」
「あ?今月は仕事、すくなかっただろうが」
「でも銀ちゃん、パチンコでちょっとほくほく。私知ってるヨ。その事新八に言えば…」

「いくらだ」
「うーん、500円くらいアルか?ちょっと分かんないけど多分それくらいアル」
「分かんないって、何を…」


遮るような家のチャイムに会話が途切れた。
「はいはーい。新聞ならお断り…」
「おはようごぜえます。旦那、ちょっと、そこ、の、女……借りてっていいですかィ」


特徴のある口調に黒い隊服に栗色まんまる頭。
「お前、なんで…」
「ちょっと用があるんでィ。だから…早くその……………」
珍しく沖田が顔をずらして、言葉を濁した。
「その?」
「……格好どうにかしろィ」


格好?別に普通にパジャマだったはず………………………………………嘘ダロ。

暑かったのか息苦しかったのか、私のパジャマの胸元が大きくはだけ、下着が顔を出していた。
「っぎゃああああ!見んな変態!」


驚いて胸元を隠し、私は洗面所の扉を強く閉めた。




でもずっと後になって、あんな風に顔を赤らめた沖田は初めてだったなと思った。

***



変なミシッという音とともに洗面所の扉がしまる。
沖田はそっと小さく息を吐いた。
「へぇ、総一郎君も意外とうぶなんだね」
「総悟です旦那。……それに、今のは…アレ。…あんまりにも貧相な体が哀れだったから…」
「素直じゃないねぇ。ま、うちのも似たようなもんか」
「旦那」
声のトーンが変わった。
珍しく真面目な、低い声。

「チャイナとアンタは…」
「父親とその娘、みたいな?俺まだそんな年食ったつもりねーんだけど」
「…でもアイツは……」
「それは自分で確認しなよ。青い春の醍醐味でしょ」

「だから、そんなんじゃないでさァ」
むくれる沖田は年相応の、10代の少年に見える。
いつもはポーカーフェイスに隠れて見えない幼さは、決まって神楽の時に崩れる。


気づいてんじゃねーの?本当は。

だがそれ以上顔をつっこむ事はしない。余計なお世話だろうから。
「待たせたナ。準備できたアル」


いつもより少しちゃんと手入れされた髪に、銀時は苦笑した。



第1おとーさん。早く戻ってこないとアンタの娘、ここのドSにとられるかもよ?



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