思いつき短文

2010/10/06 20:47

そろそろ腹が減ってくる3時間目の休み時間。

「おっかしいアル…」

沖田の隣で、珍しく神楽は本を捲って眉を潜めていた。

「どうしたんでィ。足し算が出来ねェのかィ?」
「違っげーヨバーカ。天才の神楽様が足し算で悩む訳ないダロ」
「この間の小テスト、」
「私は未来を生きる女アル」

話がずれたことに気づいた沖田は会話を元に戻す。

「で、結局なんなんでさァ」

「んー…」

神楽は何だかいい淀んでいる。そんなに嫌な事でも書いてあったんだろうか。
神楽は気乗りしなさそうに口を開いた。


「心理テスト、ってのを姉御に借りてやってみたネ。それで、この動物を当てはまる人物に当て嵌めろって書いてあったから当て嵌めたネ。そしたら、全然思い当たりなかったアル」
「そんなの、半々くらいの確率だろ」
当たらない時は当たらない。
「そうアルよなァ。だって私、お前の事何とも思ってないし」
「……何つった?」
沖田は動きをピシリと止めた。神楽は何でもないように答える。

「この動物に当て嵌めた人は、あなたの好きな人ですって、」
「…チャイナよく見たらそれ、今まで一度も外れた事のない魔界の本じゃねェか」
「でも今外れ」
「てねェ。気づいてないだけでィ」

沖田は珍しく必死に神楽を説得し始めた。だってこんなチャンス滅多にねェよ。

あっさり外れたと言ってのけられた事に対して柔なハートにヒビが入ったが今は無視。


沖田はいきなり目の前でバンッ!と机を叩いた。
「わっ!何アルかいきなり」
「今ドキドキしてるか」
「そりゃあ」
「ほらな、やっぱり。お前は俺が好きなんでさァ」
「いやいや、机叩いたせいダロ」

冷静なツッコミは受け流す。

沖田は少し身を屈めて、神楽と目線を合わせた。青い瞳が空の様だと思う。ビン底眼鏡にほとんど隠されているけど。

無言で見つめて、そっと口を開いた。

「ドキドキしないかィ」
「しないアル」
即答。分かっていたけど致命傷だ。やはり沖田の片想いらしい。


椅子に座り直して机に突っ伏した沖田に、神楽は問いかけた。

「お前そんなにモテたいアルか」
よく考えず、思ったままを吐き出す。
「んな訳ねェだろィ。チャイナだから」
「私だから?」
「……あ、」
口が滑った。予想以上の恥ずかしさに顔が上がらない。きっと神楽は意味も分からず不思議そうに首を傾げているだけなんだろうけれど。
「…心理テストなんかクソ食らえ」



そうして顔の火照りが収まるまで突っ伏した沖田は、悔しそうに顔を赤くする神楽をまんまと見逃したのであった。







「……外れて、なかったかもしれないアル」







***
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