ある夏の日〜もう無理だよ〜


今、俺の目の前には、斎藤君がいる。

彼がここに来た理由。

それは。

「最近の副長は働き詰めで、見ていられません。しかも毎日総司の相手までして、あの人が倒れでもしたら…。一度、副長を総司から離して、休ませるべきかと」
「…いやぁ。しかし、ここにいる限り、総司はトシのところに行くだろうし…」
「ですから、副長を外で休ませるんです。一日…いえ、二、三日休めば良くなると思います」
「あー…だが、一人で出す訳にもいかんし…」
「はい。その護衛には俺が「それって結局、君がトシさんと二人になりたいってだけじゃない?」」
「…総司…」

足音も気配もしないまま、突然開いた障子。

「まぁ、僕もトシさんを休ませるってことには賛成ですけどね。護衛は勿論、僕で」
「それでは意味が無いだろう。あの人の疲れの原因の大半はお前なんだから」
「そんなことないよ。僕の世話をするのはトシさんの趣味であり僕への愛情。外野は口出ししないでよ」
「…なんだと…」
「ま、まあまあ二人とも。だ、だったら、平助か左之助あたりに頼めば…」
『冗談じゃありません』

……なんでこんな時ばかり、二人の息は合うのか…。

なんだか頭が痛くなって来た…。

「ねぇ、近藤さん」
「な、なんだ?」
「近藤さんは、恋人同士を引き離すっていうのはどう思います?」
「そ、そうだな…あまり良くは…」
「いくら恋人関係であろうと、相手の心労を省みず、ただいたずらに甘えるのはどうかと思うが。愛していればこそ、相手のことをもっと考えるべきだ」
「うるさいなぁ。斎藤君にトシさんの何がわかるの?僕はちゃんとトシさんのこと考えてるよ。朝起きてから、ご飯食べてる時も、お風呂入ってる時も、隊務してる時も、夜寝る時も。僕の頭の中はいつだってトシさんでいっぱ「それならば俺だってそうだ。あの人のことを考えると夜も眠れぬほどだからな」」
「ふーん、やっぱりね。君、トシさんが好きなんだ」
「だったらなんだ」
「それは悔しいよねぇ。僕にトシさんを取られちゃって」
「だから、土方さんは物ではないと何度言えば…」

……頼むから、人の部屋で喧嘩を始めるのは止めてくれ。

「あー、二人共!!そこまでにしておけ!!とにかく、休みの件については俺がトシに話して検討するから!!」

そしてやっと、俺は二人から解放された。





「……と、いうことなんだ。頼む、トシ!!後生だから休んでくれ!!」
「………はぁ…」
「す、すまん…」
「…いや。…確かに、どっちか片方を取ったら、後が面倒そうだしな…。しかし……」

その後は、言わずもがなわかる。

恐らく、トシにとってはなんの休みにすらならないだろう。

……いや。

きっと、休みどころか、いつもの何倍も疲れる。

「……本当にすまん…」

俺は、自らの技量の無さを嘆きながら、精一杯頭を下げた。





翌日。

「…なんで斎藤君がここにいるのかな?」
「それはこちらの台詞だ」
「お邪魔虫とはこのことだよね」
「お前の方こそ、まさに疫病神だろう」
「…おい!出かける前から火花を散らすな!!」

そんなやり取りをしながら屯所を出て行く三人を見送りつつ、俺は心の中でもう一度トシに深く頭を下げた。





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