ある夏の日〜番外編〜
今朝、総司と喧嘩した。
結局、始末はつかずにいがみ合いは打ち切り。
止めたのは土方さんだった。
いつものように凛とした、覇気のある態度に見え隠れする、辛そうな様子。
……あれでは土方さんが倒れてしまう。
あの人の心を手に入れたにもかかわらず、総司の土方さんに対するあの態度。
…気にくわない。
「……斎藤君」
「……なんだ」
考え事をしていれば、今は見たくない顔と会ってしまった。
「……今朝のことだけど「土方さんは物ではない。撤回するつもりはないからな」」
「ふーん。ま、いいけどね。それよりさぁ」
「……なんだ」
こいつの言うことで、まともなことは殆どない。
警戒心から、思わず声が低いところから出る。
「……今度からは、後ろに気をつけた方がいいよ?」
「……どういう意味だ」
「…わからない?…斬っちゃうかも、って話なんだけど?」
……やっぱりな。
場に緊張が走る。
「斎藤!!」
この空気を壊したのは、俺を呼ぶ土方さんの声。
「…ん?なんだ、総司もいたのか……」
「なんですか、その反応。傷つくんですけど」
「よく言うぜ。どうせまたろくでもないこと言って斎藤に絡んでたんだろ」
…全くその通りです、土方さん。
「…失礼だなぁ。ただ、トシさんにあんまり迷惑かけないようにって忠告しただけですよ」
『お前が言うな!!』
聞き捨てならない台詞に、土方さんと声がかぶってしまって、顔が熱くなる。
「…はぁ。斎藤。こんな馬鹿はほっといて行くぞ。お前に頼みたいことがあるんだ」
「…はい。土方さん」
土方さんと共に歩き出し、角を曲がる前にそっと振りかえると、総司が不適な笑みを浮かべているのがわかる。
思いっきり睨み返してやってから、傍らを歩く端正な横顔に視線を移し、俺は決意した。
……あいつには、絶対に負けない。
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