続・ある夏の日
「トシ」
「お、どうしたんだ、近藤さん」
長年の親友に、恋仲の相手がいたことを、俺はつい最近まで知らずにいた。
「あぁ。たまにはみんなで島原にでも行こうかと思ってな。留守は山南君が守ってくれると言っているし、どうだ?」
「そうか。ま、たまにはいいんじゃねぇか」
しかもその相手が…総司だという。
「よし。じゃあ幹部連中に声かけとくよ」
「あぁ」
…なんで言ってくれなかったんだ。
水くさいじゃないか。
そんなことを部屋に戻る親友の背を見ながら、思った。
それから、新八、左之助、平助、斎藤君の部屋を回って、総司の部屋に向かう。
…二人の仲を知っているのは、俺だけ。
総司はともかく、トシの方は皆に知られたくないらしい。
「総司」
「あ、近藤さん」
あんなに小さかった総司がなぁ…。
「…近藤さん?どうしたの?大丈夫?」
感慨に耽っていた俺を心配してくれる総司。
やっぱり俺にとっては、大事な弟。
幸せになって欲しい。
今夜、幹部で島原に行くことを告げ、誘う。
「…それって、土方さんも行くんですか?」
…気のせいか、少し寒くなった。
「あ、あぁ。新八達や斎藤君も行くぞ」
「……そう」
明らかに機嫌が悪い。
……俺、何かしたか?
結局、総司も行くと言い、山南君にしっかりと留守をお願いして、島原に向かった。
島原では例の如く、新八や平助は馬鹿騒ぎし、斎藤君はここでも異様な落ち着き。左之助とトシは女達が囲んでいる。
総司はと言えば、そんな光景を酒を飲みながら眺めて…。
…いや。
正確には睨んでいる、トシを。
総司の周りに人はいない。
なんせ空気が違うのだ…さっきの比ではないくらい。
そんな状況を、当のトシは気づいておらず、隣に座る女の積極的な接触をなんとか拒んでいる。
…あ、今女に抱きつかれた。
…ゴン!!
総司が杯を勢いよく台に置き、中の酒がこぼれた。
……やばい。
「…トシ!お前には、大事な人がいるだろう!!」
思わず叫んだ。
見ると、トシは固まっている。
…済まない、トシ。
しかし俺は二人が大事なんだ。
こんなことで二人に仲違いしてほしくない。
…だから。
「もっと総司を気にかけてやってくれ。お前達は恋人同士だろう!!」
その日から、俺はしばらくトシに口をきいて貰えなくなった。
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