※沢山の捏造が入っております。
大丈夫、どんと来いな方のみどうぞ。





俺たちが壬生の浪士組を組織してから、年月が風のようにあっという間に過ぎていった。
気がつけば、あの時一緒にいた仲間はもうたった二人。
土方さんと俺だけになってしまった。

どうしてこんな風になったんだろう。
俺の信ずる方は世間の敵になり、尊敬する人は罪人として捕まった。
俺はたった一人、好いた人を守り支えていく。
俺はあの時立てた誓いを守る。
最後までついていく…何があっても。

しかし、約束を律儀にも守ろうとしていたのは、どうやら俺だけだったらしい―――。





その日、何の前触れもなく土方さんに呼び出された。
これからまた戦で、その出撃準備をしている最中だった。

「…お前は、江戸に戻れ」
「…は?」

土方さんが何を言っているのかわからない…こんなこと、今までで初めてだった。

今俺たちがいるのは会津。
江戸城を無血制圧した官軍が江戸、関東より北の抵抗勢力の排除に乗り出し、現在一番の戦場となっている地だ。
そこを抜け出し、江戸に戻る意味がわからない。

「何かの…任務でしょうか?」
「あぁ、そうだ」

俺が部屋に訪れてからずっと土方さんは外を眺めていたが、俺の問いを肯定した後俺を見て、まるで戦場で指揮を執る時のように凛々しい姿で『任務』を告げた。

「斎藤一。お前には江戸の千駄ヶ谷に行ってもらう。そこで、お前なりのけじめをつけてこい。それが俺からの…最後の命令だ」
「なっ…」

『千駄ヶ谷』

そこは、総司が匿われている家がある場所。
この人は、本当に凄いと思った。
まだ俺が、総司のことを気にしていたことを知っていたのだ。

ずっと、心配だった。
江戸が制圧されたと聞いた時には、どうなったんだろうもしかしたら殺されてしまったかもしれないと、夜も眠れなかった。
別れてから、迷い続けて出せなかった答えなどどこかに吹き飛び、ただ純粋に後悔した。

どうしてあの時、もっとちゃんと見てやれなかったんだろう。
総司は俺を真っ直ぐ見つめてくれたのに、戸惑うばかりで何も返せなかった。
後悔を重ねてそれが辛くて、戦にその思いをぶつけていた。

今からでもいい。
せめて一目逢って、謝りたかった。
共犯者になったのは、俺の意志もあったのだ。
お前だけが責任を負う必要はないのだと。
そして、総司のようにちゃんと礼を言いたい。
お前のお陰で、俺は独りではなかった。
傍にいれて良かった…と。

でも、もう遅い。
戦は激化するばかりで、江戸には近づけないし何より土方さんの支えになるのだと決めていた。

…そう思っていたのに。

「なに、ゆえ…」
「質問は受け付けない。お前はただ命令に従え。それと、その後のことはお前の好きにしていい。残るなり戻るなり、自由にしろ」

そう言い残して去ろうとする背中に、またもや心中に迷いが渦巻く。
今までずっと、何かと土方さんを天秤に掛けることがあらば迷わず自分は土方さんを取るだろうと思っていた。
だが現実ではこうして迷い続けている。

―――後悔だけは、すんなよ。

かつての土方さんの言葉が蘇る。

「…土方さん」

部屋を出る間際の土方さんに言っておかなければならない言葉を、今言っておく。
俺は反対を向いている為気配でのみ土方さんの存在を感じとる。
部屋を出る手前で足を止めてくれたらしく、その様子を頭に思い浮かべながら…後悔しないように。

「…ありがとうございます」
「行ってこい、アイツが待ってる」
「…はい!」

俺はきっちりと頭を下げて、そのまま部屋を飛び出した。



伝えなければならないことがある。
まだ間に合う内に。
どうか、逢えますように。
どうかまだ…現世(ここ)にいますように。





会津からの脱出も、江戸へ入るのもやはり厳しかった。
しかしあらゆる手を使って何とか入り込み、一路千駄ヶ谷を目指した。

確か、松本先生の知己の方の家だった筈。

今頃、総司はどうしているのだろう。
治らない病故に快復を願うことは出来ないのが辛いが、せめて少しでも穏やかな日々を過ごしていてくれれば…。
会津からの道中、総司の無事と総司と過ごした日々を思い出していた。





初めて逢った時には、あまりいい印象は持っていなかった。
いつも笑みを浮かべているのに、裏では何を考えているのかわからなくて。
近藤さんを慕っているというのはわかっていたが、他の人間をどこか小馬鹿にしている気がしてならなかった。
特に土方さんに対しては酷く、あの人の嫌がることを面白がってやるところなど、逢って早々に土方さんに惹かれた俺からしてみれば許せないことこの上ない。
だが結局、総司は俺よりも先に土方さんに想いを寄せていた。

それを知った時から、俺たちは共犯者となった。

最初は総司が言い出したことで、確かに俺も嫌だと思っていた筈なのに。
いつの間にか俺の中には総司がいて、例えそれが同じ痛みを知る者同士の慰め合いだったのだとしても、俺には総司が必要だった。
いや、今もきっと必要なんだ。
だからどんなことがあっても、必ず逢って話をして…そして最期まで傍にいる。
アイツが願ったことを、叶えてやるんだ。







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