熱に酔う
新選組となって初めて迎えた、お正月。
僕たちは久々に宴会を開いた。
…まぁ、似たようなことをほぼ毎日やってる人もいるけど。
今日は特別。
だって屯所となっている、八木さんの家で行うんだから。
宴会が始まると、やっぱり酒の飲みすぎで例の三人が騒ぎ出す。
…いや、騒いでるのはいつものこと、かな。
そんな中、僕は近藤さんと話をしている土方さんの傍に。
「…あれぇ?土方さんてば、全然飲んでないじゃないですかぁ。あ、そういえば、全く飲めない『下・戸』なんでしたっけぇ?」
気性の荒い態度とは反対に、お猪口にちびちびと口を付けているのが面白くて、ついからかってしまう。
「…うるせぇんだよ。ほっとけ」
そう言って、土方さんは僕の位置とは反対に身体を向けた。
「……まぁ、たまには酔ってみたらいいんじゃないですか?意識飛ばしちゃっても、ここなら部屋はすぐ近くなわけですし。…なんだったら僕が介抱してあげますよ?」
「……間違ってもお前には頼まねぇ」
僕の送った流し目を受けた土方さんは、そんな可愛くないことを言う。
…僕以外に頼んだりしたら、ただじゃおかないよ?
そう思うと、何だか無性に酔わせたくなってきた。
内心を悟られないように、笑顔を作って土方さんのお猪口に、物凄く強いお酒を注いだ。
「…それじゃあ、これを最後にします?」
「ん…。そうだな」
……飲んだ飲んだ。
内心ほくそ笑む。
…これで今夜の土方さんは、僕だけのもの。
酔いつぶれた土方さんを抱えて、副長室に向かった。
布団を敷こうとすると、入り口で寝ていたはずの土方さんに妨害される。
「土方さん?」
背後から抱き締められるなんて初めての経験で、身体が固まってしまう。
そうこうしているうちに、僕はいつの間にか押し倒されていた。
僕の上にいるその人は、いつもの厳格な瞳ではなく、熱のこもった色で僕を見つめる。
…そんな目で見られたら、我慢出来ない。
こっちから口づけると、それもいつもの包み込むような甘いものではなく、激しくて積極的に舌を絡めてくる。
…自身に熱が集まるのを感じる。
荒っぽく服を脱がそうとするそのしなやかな手を、下腹部に導いた。
「…ん、はぁっ、ひじ、か、たさ、ん…さわっ、て?」
土方さんは、期待に素直に応えてくれた。
「……っは、あっ、もっ、とぉ…」
…思わず漏れた甘えた声。
「…総司」
耳元で囁かれた、普段より低めの色っぽい声に、どうしようもなく愛情が募る。
…好きだ。
好き、好き、好き…。
気がついた時には、後ろにはもう、土方さんの長い指を感じた。
良いところをただ攻められて、でももっと、という欲が出る。
…土方さんの、熱くて、太いものが欲しい…。
「…ね、…ひ、じかたさ、のっ、…ちょー、だっい…」
土方さんは、ふっ、と微笑むと僕を一気に貫いた。
「…っあぁ!!はぁっ…」
そのまま激しく攻められて、僕は与えられた大好きなものを甘受した。
…ずっと、このままでいられたらいいのに…。
そんなことを頭の片隅で思いながら、僕は絶頂を味わった。
「…ふふっ」
隣で眠っている恋人を眺めながら、幸せな時を味わう。
綺麗な黒髪に指を絡ませ梳いていると、瞼の下から紫が覗いた。
「…ん。総司…?」
「おはようございます、土方さん」
寝ぼけ眼の虚ろな視線を受けて、僕は爽やかな笑顔で応じる。
「…昨日は良かったです。あんなの、初めてで…」
「…?お前、なんでここに…?」
…もしかして、覚えてない…?
頭を抱えながら間抜けな質問をしてくることに、それまでの高揚が一気に醒めていく。
僕が黙っていると、様子が変わったことに気づいた土方さんは、じっと僕を見つめている。
…たぶん、必死に思い出そうとでもしているんだろうけど。
「…近藤さーんっ!!」
「…っ、ちょっ、待て、総司っ!」
慌てて止めようとする土方さんを後目に、僕は内心で密かに企む。
……土方さんにはまた、お酒飲んで貰おう。
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