今日は非番でもなく、おまけに夜の巡察もあったために土方さんの元へと行くのが思っていたより遅くなってしまった。
まぁ約束はしてあったし、土方さんは隊の全てを掌握しているから、僕が巡察当番だってことくらい知っている筈。
特に気にもせずに身を清めて副長室へと向かった。

考えてみれば、今日は本当なら一日土方さんとべったり出来る予定だったのに。
それが小さな失敗のお陰で土方さんの機嫌は損ねることになって、はっきり言って面倒臭いことこの上ない。
誰のせいかと言えば、何度も言うように自分のせいだから誰かに当たることも出来なくて不満や苛々が溜まっていく。

ドタドタと抑えられない足音を立てながら部屋の前まで行って、僕はまた頭を抱えたくなった。

襖は再び開かれ、中には…倒れた斎藤君の姿。

「え?あ、の…どういうこと、ですか?土方さん…」
「…夜這いに来たんだと」
「ふへ!?」

どうやら、襲われそうになったところで格闘し、やっとのことで気絶させるに至った…とのことらしい。
布団の上にうつ伏せで倒れる斎藤君に、どうかこのまま明日まで起きませんように、と心の中で手を合わせて願った。

「…はぁ。ったく、今日は散々な一日だったな…」
「…何で斎藤君のこと、部屋に入れたんですか」
「勝手に入ってきたんだよ。有無を言わさず、って感じだった」

腰に手をやり疲れたように、本日何度目かの盛大な溜め息。
そして眉間には素晴らしいくらい鮮やかに浮き出たシワ。

一日中お預けされた僕は、もう耐えられずに土方さんに飛びついた。

「…ん、はぁ…」

鼻を満たす土方さんの匂いに、嗅覚は充足完了。
視覚も聴覚もまだ足りないけど、一応は平気。

あと飢えて死にそうなのは…。

「はっ、う…ん…」

どうせいくら待っても土方さんからしてくれないだろうから、こっちから動いてやる。
顔を上げた先にある唇に吸い付き、自ら舌を差し込んで土方さんを誘った。
口内に広がる土方さんの味にやっと味覚が満足し、残るは一つ。

「土方さん…さわっ、て?」
「触ってって…」

布団の外れに押し倒して迫るが、土方さんの視線は布団上で倒れる斎藤君へ。
異存はないけど懸念はあり、っていう困り果てた様子で攻めも退きもしない。

もうこっちは斎藤君の存在なんか気にしてる場合じゃないし、いざ目が覚めたとしても見せつけてやればいいくらいの気持ちで土方さんの首に腕を回して視界を独占した。

「大丈夫ですよ。目、覚めませんから」
「どっから来るんだその自信」

二度目の口づけ以降、迷った挙げ句土方さんも僕の背に腕を回して応えてくれた。

グイッと押し広げられる感覚に身体が震える。
太くて熱いものが中を抉るだけでなく、動くたびにいいところを掠めていく為に口からはひっきりなしに声が洩れてしまった。

「は、あぁっ!んっ…そ、こっ!あっ…いいよぅ!」
「あんま鳴くと、起きちまう、ぞ!」
「ひやぁぁあぁんんっ!!」

人を咎めるような台詞を吐きながら、それでもなお強く腰を打ちつけてくる。
本当、さっきまで斎藤君の扱いに困っていたのは何処の誰だと言いたい。

それでも僕の身体は与えられる痛いほどの快感に、悦びを現すように背がしなってしまう。

文句は終わってからになりそうだ。

「…っ、何考えてる…?」
「…っに何も!それより…もっと激しくっ、してよ」
「ん…ま、そうだな。くだらねぇこと、考えられねぇようにしてやるよ」

言葉通りさっきまでとは違い、その動きは力強さも速さも、ついでに熱さも倍増し僕を攻めた。
そして堪えきれなくなった頃、僕は肉棒が奥に向かって入って来た瞬間に熱を放ち、それと同時に中のものを無意識に締め付けたお陰か、内部を土方さんの蜜が溢れんばかりに満たした。





翌朝。

「…ん、ここは…って、えっ!?」

夢と現実の間に微睡んでいると、耳に入ってくる聞き慣れた声。
それは戸惑いから驚愕へと変化し、意識を一気に現実に引き込むには充分だった。

「…斎藤君。朝からうるさいよ…」
「な、な、な、何で俺はここにいるんだ!?と言うより、何故お前は土方さんと一緒に寝ているんだ!」
「当たり前じゃない、僕たちそういう仲なんだからさ。…いたっ」

ここぞとばかりに胸を張って宣言すると、背後から頭にポカンと一発入れられた。
もちろん犯人は一人しかいない。

「ったく、高らかと宣言するような内容じゃあねぇだろ」
「…土方さん、おはようございます」

あぁおはよう、と僕ではなく斎藤君だけを見て挨拶をする。

昨夜、斎藤君の隣で散々僕を攻め立てたのは土方さんじゃないか!

昨日の件と共に一気に僕の中に不満が湧き上がる。
しかしそれは口に出す前に、次の土方さんの一言で霧散することになる。

「それにしても、一体何だったんだ?昨日のは」

怪訝そうに斎藤君を見た土方さんは、もういつも通りの彼の様子にさらに首を傾げた。
それはそうだ。
日付は変わり、彼の中の薬はもう無くなったのだから。
斎藤君は斎藤君で、よくわからない、って顔をしている。

「土方さん。あの…俺、昨日のことをよく覚えていないのですが…」
「…覚えてない、か」

…マズい。

過去に土方さんも全く同じ症状を経験している。
それはもちろん、僕が土方さんに斎藤君と同じものを盛ったからに他ならないのだが、このまま行けば二人は必ず疑うだろう…昨日のみならず今までの異常が全部、人為的に起きたことだって。

「…とにかく!良かったじゃないですか、斎藤君が元に戻って」

二人の空気を払拭したくて切り替えを促す。
その目論見は上手くいったようで、二人は何とか納得してくれた。
まぁ、どっちも消化不良って顔してたけど。



と、言う訳で今回はいい勉強が出来たんだけど、こんなことで挫ける僕じゃない。
次回からは慎重に、もっと用心する。

僕は、そんなことを人知れず固く心に誓ったのだった。




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